ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

精神ハック、マインド・ダイヴ【6-1-3】

ダンジョウは再度 宇宙の星海に身を委ね 周りの鏡岩に意識をずらした 多大なる雑音と美しい響きが 混在していた 雑音のなかから ふたりの声の周波数帯を 検知しようと試みた しかしながら ふたりの帯域は大きく異なっており まとめ上げるのは至難の業だった …

増幅する感覚【6-1-2】

ダンジョウは宇宙の星海に 身体を預けて漂っていた そしてクズキリという男について 考えていた もしかすると 実はやつはパウンドの 仲間なのではないか などあらゆる憶測が ダンジョウの周りを駆け回った するとその時 ふたりの悲鳴めいた声が ダンジョウの…

鏡岩と瞑想【6-1-1】

ダンジョウが興奮して言ったが テンムスは痛みを堪えながら ここの土地も像を映しているだけだ しかもただ映しているだけでは なさそうだぞ さっきよりも痛みが 増している気がする 病は気からって言うじゃないか ダンジョウは励ましたが それでもなお痛みは…

芽吹く猜疑心【5-4-4】

テンムス ダンジョウはひとこと 静かに呟いた テンムスはどうやら 何者かに何かをされたらしく 激しい痛みを訴えていた 誰にやられた これは自分の所為なの だから自分でカタをつけなくちゃ 語尾に覇気がない 真実を見ていない限り この状況では 誰かに何か…

定刻【5-4-3】

一方のホージは 耳元で囁く悪口よりも 先ほどの戦闘での 自分の不甲斐なさの方で こころを抉り取られていた しかも右腕が負傷している 恐らく骨折だろう 腫れ具合と骨の角度でわかる とんだ激痛だったが 今はそんなものどうでも良かった ダンジョウ やつは何…

押し潰されそうな痛み【5-4-2】

予告通りだテンムス 小屋を壊した罰を与える するとクズキリは テンムスのおでこに 軽くデコピンをした 初めはそこまで痛みを 感じなかったが 後々強烈な痛みを伴った それは頭がかち割れそう というよりも 押し潰されそうという 言葉の方が合っていた 特に…

罰を受けるのは【5-4-1】

ダンジョウは 外で起きていることを 確かめるために 小屋の扉を開けようとしたが びくともしなかった 砂金時計は まだ半分以上残っている その間も耳元では 頻りに悪口の応酬が 続いている ダンジョウは テンムスは皇帝に なるくらいだから いくらなんでも …

陰険小屋【5-3-4】

ダンジョウの耳元では 確かに何者かが 囁いていた そしてそれは テンムスとホージの ふたりに関しても 同じだった その声は次第に 近づいてきて 恐怖と嫌悪の感情が 三人のこころを 強く蝕んだ 砂金時計は まだたんまり残っている ダンジョウは耐え切れず 勾…

陰湿な囁き【5-3-3】

何時間眠ったことか 地底には時刻なんてものは 存在していないので いま何時なのか 外の明るさも 常に一定なため 昼なのか夜なのかすらも 分からなかった 充分眠ったダンジョウは ゆっくり目を開いて 薄暗い部屋を見渡した 砂金時計がさらさら 静かに流れて…

砂金時計の客間【5-3-2】

束の間の休息は クズキリの一言で 終わりを告げた 次はこの耳当てをつけて 暫く過ごしてもらう 勾玉光輪を 各自持っていてくれ 三人は耳当てをつけ 次の授業であろう 準備を整えた ダンジョウは テンムスへ勾玉を 返していなかったので 例を添えて返却した …

一時休息【5-3-1】

ダンジョウが機転を利かせたことで 三人の休息が確約された 奥の小屋で待っていたクズキリは 遅かったなというような顔をしながら 三人を見ていた 長机にはお茶とお茶菓子があった ダンジョウは地底にも このような文化があることを 物珍しく思った お茶は一…

貫く光【5-2-4】

六発目 七発目の拳をともにかわし ふたりは弓矢を構えた ダンジョウが自らの光輪に 心力を一点集中させ ホージもそれに 引き寄せられるように 心力を増幅させた ホージの心力が ダンジョウの心力と混ざり合い 地上では見たことのない 色を帯びていた いまだ …

不死鳥の弓矢【5-2-3】

ダンジョウは咄嗟に 負傷したホージに駆け寄り 彼の勾玉光輪を拝借した それをテンムスに渡すと テレパスで作戦を伝えた ゴリラ型マシンの 地面に拳を突き立てる リズムを観察すると 七回に一回 ワンテンポ挟む動作をしていた ダンジョウの観察眼は それを見…

ホージの特攻【5-2-2】

ダンジョウが冷静な 状況分析をするなか ホージはひとり ゴリラ型マシンの懐へ 特攻して行った 他のふたりは制止したが まるで聞く耳を持たなかった どうやら彼は 自らの力量を 過信しているに違いない ホージの勾玉光輪もまた ダンジョウやテンムスのものと…

殺戮マシン【5-2-1】

頂上に着いたダンジョウたち 三人を待ち構えていたのは ゴリラ型の巨大なマシンだった クズキリは走りながら 後ろを振り返り こいつを倒したら少し休憩だ 奥の小屋で待っているぞ 呑気な顔をしながら ありえないスピードで 走り去って行った 早速暴れ回るゴ…

斬新な回復方法【5-1-4】

ダンジョウは機転を効かせて 撃ち込まれるエネルギー弾を 投げられた卵を受け止めるように 勾玉光輪で受け止めてみた 光の網を作って 一瞬だけ頂回復のモーションに入り エネルギー弾を身体に 吸収させるようなイメージだ 一瞬一瞬の出来事ではあったが 心力…

ぐらつく足場【5-1-3】

ダンジョウは足場に着くたび 悲鳴めいた声をあげては また次の足場へ飛んだ そんなことをしているうちに 心力は底をつきかけ 彼の顔には目に見えて 疲労の色が浮き彫りとなった しかしながら こんなところで 休むわけにはいかなかった 最も 足場が休ませては…

競争社会【5-1-2】

師範代のクズキリを含めた四人は 先の見えない崖の山を ひたすら上に進んでいた ダンジョウは先ほど 心力を消耗したせいか 若干疲労が溜まっていた 頂回復しようと思ったが その場に留まっては 皆に置いてかれてしまう 少し悩んだ挙句 そのまま進むことを決…

冒険の書 Ⅰ

産まれて堕ちて ここに居る 踏まれて挫かれ うずくまる 予期せぬ奇跡は すべてが必然 この書物にも 記されている あとの頁は 自分で記す その魂を 投げ出すことは この書を捨てる ことにも等しい 次の魂に 引き継ぐ為に あなたの生きた 証を記せ 息の根が止…

折れないこころ【5-1-1】

僅かな足場を 渡り終えたクズキリと テンムスとホージの三人は 奈落の底を見つめていた 師匠 これはもうだめかも 知れないですね ホージが呆れたように言った 馬鹿なこと言わないで テンムスが刺々しく言った 彼は必ずここに来るわ 奈落の底の さらに奥の方…

廻る人生【4-4-4】

クズキリは ダンジョウが落ちたことに 気がついていたが 特別な動きは取らなかった テンムスもホージも気がついたが どうしようも出来なかった テンムスは おのれの無力さを悔やんだ ホージは平然と 状況に身を委ねていた 崖の足場が 視界から遠くなる 一瞬…

奈落からの手招き【4-4-3】

崖に続く道は 実際に足を乗せてみると 遠目から見るよりも 幅がないように感じた その上 奈落の底から 見えない手が 身体を引っ張っているような そんな感じすらする ダンジョウは 注意深く足を踏み入れ 音も立てぬよう 抜き足差し足で歩いた 終始へっぴり腰…

置いてかれる恐怖【4-4-2】

ダンジョウの脳裏に 小さい頃の記憶が 蘇って来た 鬱蒼とした森のなか 木々の迷路が 行手を阻む 行けども行けども 幹ばかり 終いには幹の模様が 人の顔に見えてきた 父に置いてかれてゆく 知らない何かに 追いかけられている その日彼は 森のなかで過ごした …

心力コントロール【4-4-1】

クズキリの居るこの土地は 地上と地底の間の空間らしいが ダンジョウにはどうにも ただの鍾乳洞にしか見えなかった 刺々しい岩が 所々に聳え立っており 水滴が上の岩から 滴り落ちていた この水滴は地上の海のものらしい 地球の中心には マグマが通っている…

心力の浮き沈み【4-3-4】

なんか気に食わないんだよな ホージだっけか お前のその顔 なんかむかつく ダンジョウは急に ホージに対して 戦線布告をした むかつくと言われても ぼくは生まれてこの方 こんな顔だよ そうじゃなくって ダンジョウは もどかしそうに 地団駄を踏んだ テンム…

クズキリの弟子、ホージ【4-3-3】

ぼくもその修行に 加わりたいです 横で聞いていたホージが 途端に口を開いた 丁度いいな 年頃も近いみたいだし クズキリはホージの案に 賛成した しかしながら クズキリは怪訝な顔をした ひとつ疑問なのだが 地上人なのにこの数日間 石畳の反射のみで 僅かに…

パウンドの弱点【4-3-2】

パウンドは 心力の扱いに 非常に長けている 生半可な術では 簡単に見透かされるぞ クズキリの言葉には やや棘があった パウンドが鏡を見た時 一瞬動きが鈍ったんだ テンムスは 意識を失う瞬間の光景を 出来る限り詳細に話した 鏡ならぼくも持っている ダンジ…

人間という生き物【4-3-1】

それじゃあまるで パウンドも被害者じゃないか ダンジョウが 神妙な顔をして言った そうでもないのだ こればかりは 運命の悪戯としか 言いようがない 誰かを好きになって そんな悲しい結末が 待っているなんて けれどもだからと言って 何も知らない子どもた…

テンソヴァとパウンド【4-2-4】

昔わたしの弟子に テンソヴァと パウンドという 少年たちが居た 互いに競い合い 切磋琢磨しながら 技を磨いていった ある時の実地修行の際 パウンドは あるひとりの 不思議な少女と出会った ふたりは次第に 仲良くなっていった テンソヴァやわたしは このこ…