ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

人間という生き物【4-3-1】

それじゃあまるで

パウンドも被害者じゃないか

ダンジョウが

神妙な顔をして言った

そうでもないのだ

こればかりは

運命の悪戯としか

言いようがない

誰かを好きになって

そんな悲しい結末が

待っているなんて

けれどもだからと言って

何も知らない子どもたちを

攫って来て良い理由にはならない

ダンジョウは同情しかけたが

祭壇での衝撃的な

光景を目にしたときの

怒りが湧き上がってきた

そして

病み上がりとはいえ

黙ったままのテンムスが

気になった

四方八方に飛び散ったものが

なんなのか

知っているんだろう

あれはわたしと母上の

大切な鏡だった

わたしにも

何故あそこにあれが

現れたのか分からない

けれども

パウンドの顔は

鏡を見た途端

明らかに恐怖した

心力が揺らいだのを感じた


── 脆いままのこころのままで、地底帝国の詩。