ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2021-01-01から1年間の記事一覧

真実の一冊

ぼくのこころのなかは この一冊で 完結しているかも知れない けれどもぼくは 探し求めたい きみと あなたと わたしと 一緒に 本当に分かり合える その時を目指して ── 旅の最後の一歩まで、ぼくは歩き続ける。

コンクリートのカステラ

地面から生えている コンクリートのカステラ 風に靡くこともなく ずっしり空へ 伸びている カラメルのガラスには わたあめの空を 映している 何事もない日々が 何事もないように 過ぎてゆく きみに待ち受ける あらゆる運命も 知らんぷりして コンクリートの…

壮大なかくれんぼ【2-2-4】

テンムスの身なりは 地底人であることを 微塵たりとも 感じさせなかった 地底人特有の 模様を描いた化粧も 先ほど着替えた際に 落としてしまったので 地上にいるような ありふれた女性だった ただ この世界では異質 そのものだったので 誰にも見つからないよ…

ユーフォの木

鈴か 何か 分からないが ここらの木には 何やらユーフォが くっついている 何かの 果実か 分からないが 多分これは 禁断の実に 違いない 口に入れたら 遠い宇宙は もうすぐそこだ ── 変な形の、木の実がひとつふたつ。

雪原の上の砂漠

大雪原の上に 降り積もった 砂漠を歩く 歩き疲れて このまま埋もれて しまいたいが 目的地は すぐそこなのだ いますぐここを 掘り返して 湧き出る泥を 貪りたいが 目的地は すぐそこなのだ 我慢をすれば もっといいことが 待っている ── 自分で決めたことは…

こころの絆【2-2-3】

ふたりは お互いの衣服を 交換し合った 着替えの最中 テンムスは 目がよく見えないが ダンジョウが ちらちらこちらへ 視線を送っているのを感じた テンムスが一喝するも ダンジョウは 初めて女性の裸を 目の当たりにして 好奇心冷めやらなかったのだ 地底と…

隕石より出しもの

宇宙から降って来た 隕石が割れて なかから 見慣れないものが 這い出て来た 水っぽくはないし かと言って 泥状でもない 中途半端に ごつごつしていて 適度にしっとりしている 掬って口に運んでみると ぼくの身体は 宇宙へ飛んだ ── どんな薬物よりも、危険な…

香ばしい台地

蛍光灯の太陽に 照らされた 艶やかに光る 地面が続く 所々に隕石が 埋まっていて まるで風景は 月面のようだ 辺りには 香ばしいにおいが 充満している ── 落ちている石ころですら、いい香りがする。

生命の鼓動【2-2-2】

ダンジョウは 顔を曇らせた テンムスが気になり どうしたのか聞いてみた わたしたちの 乗っていた機械は ああ見えても 生命を持っているんだ いま ひとつの生命が 潰えてしまった しようがなかったとはいえ こころが痛い テンムスのもつ勾玉光輪は 棘のよう…

牛乳沼に映る木の実

沼の側には たくさんの木が 生えていて そこには 貝のような 殻を纏った 木の実がたくさん 成っていた そのままでは とても硬くて 歯が折れてしまうが 割って食べれば 最高の栄養だ ── 反対から読むと、また違う意味になる言葉は多い。

穴だらけの地図

ガムで出来た 地図をひらげて お宝の在処を 確認する どこにも載って いない場合 地図を口に押し込んで 咀嚼する 口に拡がる 滑らかな風味 どおりで たくさん穴が 空いていると 思ったもん ── 発酵の過程で、お宝の在処は忘れさられてしまったようだ。

地底都市の全景【2-2-1】

蜂型機械の襲撃を 切り抜けたものの 防壁迷宮を出ると そこは足場ひとつない 断崖絶壁だった 飛び跳ね機械に乗ったまま 勢いよく降下するふたり ダンジョウはもう 生きた心地がしなかった 一方のテンムスは 冷静に状況を把握し 事態の収拾を 図ろうとしてい…

牛乳沼

捨てろ 捨てろ 人間の 飲んでいい ものじゃない 沼の水だ 使うなら 充分濾過して よく煮詰めてから 使うんだよ そのまま飲んだら 身体に悪いよ ── 原液は、不純物だらけ。

シャーベットの箱庭

シャーベットの 敷き詰められた箱庭 そこには 指先の木を 気にしている 雪だるまがふたり ささくれ立った 指を見て 嘆いている こんな綺麗な 箱庭にいるのに 意識は指先に 向いている ── 環境が恵まれていても、気づかない者は多い。

迷宮を抜けて【2-1-4】

レンガ造りの壁を どんどん開いて 都市部を目指すふたり 途中幾らか 蜂型機械たちと 出くわしながらも 難無く無事に切り抜けていた テンムスの直感では もうすぐ都市部が 近いと言う おそらく最後と思われる 防壁の前に立ったが そこには レンガ造りの壁は …

沸騰する海

海底火山で 熱せられ 海は今にも 蒸発寸前だ 魚があちこちで 茹であがって タコやエビも 真っ赤になっている 塩も相まって いい出汁が 出ているだろう これは自然界の 最高級スープだ ── 火傷しないよう、気をつけて。

霧のガラス

防波堤は 霜のガラスで 覆われている その先の海は まるで 水族館のようだ ぼくらの 思っている以上に 霜のガラスは 頑丈で そこから先には どう足掻いても 行けないのだ きみとぼくの 距離感と同じだ ── 近くにいても、こころを阻むもの。

薄明かりからの強襲【2-1-3】

テンムスが乗っていたような 小型の機械の大群が 空を飛びながら こちらへ向かって来ていた よく見ると 蜂のような形をしており 尻には針も しっかりついている ダンジョウはそれを見た瞬間 脚元が凍りついてしまった テンムスがまたもや一喝すると 少年は我…

邪心

悲しいときには 裏腹に 笑っている神も 居たりする 嬉しいときには 裏腹に 妬んでいる神も 居たりする バランスを取る為に 必要だけれど 絶対に表に出ないように 顔は反対の 表情を浮かべて ── すべて同情するなんて、難しい話だ、

同情

神さまはなんて 意地悪なんだ そんな言葉を 耳にする けれども神は あなたの神は あなたの神よ 彼らはみなに 平等なのだ 平等に傷つけ 平等に与える 我々には 悲しいときに 涙を流し 嬉しいときに 笑うことしか出来ない すべてはあなたの 世界の出来事なのだ…

検証【2-1-2】

レンガみたいな壁が スライドパズルみたいに 開いたんだ テンムスにはにわかに 信じ難い話だった 壁がそんな風に開くなんて ましてやこの迷宮は 都市の防壁である そんな簡単に開いてしまえば 却って困るのだ テンムスは落ち着いては 居られなかったが 考え…

実験結果

実験結果は 予期せぬもので あるから面白い その結果に なるように 行うことは 実験とは言わない 誰も見たことのない きみだけの実験結果を 教えておくれ ── 調べても、どこにも載っていない。

ナレサス

身体は刺激を 感じなくなると どんどん歪み 肥大してゆく 日々違った 刺激を与えることで その形を 保つことが出来る ナレサス きみは刺激を 無くする為に 敵国から送られた 刺客だな ── いつの間にか、習慣になってしまうもの。

秘められた力【2-1-1】

このまま前に進めだなんて 少年は無性に やるせない気分に陥った さっき見せた力は きっとあなた自身の持つ力よ そんな弱気ではこの先 生きて行けないわ それでもくよくよする少年に テンムスは一喝した もういい このままここで のたれ死んじゃえばいいわ …

起爆装置

身体に仕組まれた 爆弾が爆発しそうだ 起爆装置を 爆破しないと 誰が持って(い)る 誰か持って(い)る 起爆装置の ボタンは押すな 押さずに そのまま わたしに渡せ さもなくば お前の心臓 爆発するぞ ── みんなもっている、爆破スイッチ。

痛みの先に

何かを得るためには 痛みを伴うことも多い 乗り越えたその先に 待っているもののために きみは痛みに 耐えねばならない 楽して手に入る宝はない 近道なんてものも もちろんない 寧ろ遠回りする方が 宝の在処への 近道だったりもする ── どんな苦痛でも、耐え…

道は前にしかない【1-4-4】

来た道がない ダンジョウは落胆した さっきの爆風で 壁が吹き飛んでしまったのね テンムスは悲しげに言った ぼくはどうやって帰れば 少年に後戻りをする 方法は現時点では 存在しなかった 足元が 永遠に沈んでゆくような 絶望を感じながら ダンジョウは テン…

面倒臭がりの成れの果て

面倒臭い 面倒臭い やることなすこと 面倒臭い そんな面倒臭がりさんたちは ゆくゆく身体を失って 標本のなかへ入れられて 魂だけの牢獄で過ごすだろう 一生懸命生きなかった罰として 無期懲役を言い渡す ── 罪の意識がないから、なおさら厄介だ。

飴細工の道路

どこもかしこも べっこう飴で コーティングされた みたいに てかてかしている 序でに夜空も映して きらきらしている 砂金でも混じったように 月の光を浴びて 輝いている ちょうど色味も べっこう色だ このまま舌をつけて 舐めてみたいけれど きっと離れなく…

テンムスの正体【1-4-3】

わたしは地底人 人間だけれど あなた方地上人とは 少し違うわね あなた方の使う 五感が少し不自由な代わりに 第六感以降を使えるの あなたこそ何者なの 勾玉光輪のあの光はなに 首のたくさんある 龍にも見えた まるで地底帝国に伝わる 伝説と同じみたい テン…