2021-01-01から1年間の記事一覧
ぼくのこころのなかは この一冊で 完結しているかも知れない けれどもぼくは 探し求めたい きみと あなたと わたしと 一緒に 本当に分かり合える その時を目指して ── 旅の最後の一歩まで、ぼくは歩き続ける。
地面から生えている コンクリートのカステラ 風に靡くこともなく ずっしり空へ 伸びている カラメルのガラスには わたあめの空を 映している 何事もない日々が 何事もないように 過ぎてゆく きみに待ち受ける あらゆる運命も 知らんぷりして コンクリートの…
テンムスの身なりは 地底人であることを 微塵たりとも 感じさせなかった 地底人特有の 模様を描いた化粧も 先ほど着替えた際に 落としてしまったので 地上にいるような ありふれた女性だった ただ この世界では異質 そのものだったので 誰にも見つからないよ…
鈴か 何か 分からないが ここらの木には 何やらユーフォが くっついている 何かの 果実か 分からないが 多分これは 禁断の実に 違いない 口に入れたら 遠い宇宙は もうすぐそこだ ── 変な形の、木の実がひとつふたつ。
大雪原の上に 降り積もった 砂漠を歩く 歩き疲れて このまま埋もれて しまいたいが 目的地は すぐそこなのだ いますぐここを 掘り返して 湧き出る泥を 貪りたいが 目的地は すぐそこなのだ 我慢をすれば もっといいことが 待っている ── 自分で決めたことは…
ふたりは お互いの衣服を 交換し合った 着替えの最中 テンムスは 目がよく見えないが ダンジョウが ちらちらこちらへ 視線を送っているのを感じた テンムスが一喝するも ダンジョウは 初めて女性の裸を 目の当たりにして 好奇心冷めやらなかったのだ 地底と…
宇宙から降って来た 隕石が割れて なかから 見慣れないものが 這い出て来た 水っぽくはないし かと言って 泥状でもない 中途半端に ごつごつしていて 適度にしっとりしている 掬って口に運んでみると ぼくの身体は 宇宙へ飛んだ ── どんな薬物よりも、危険な…
蛍光灯の太陽に 照らされた 艶やかに光る 地面が続く 所々に隕石が 埋まっていて まるで風景は 月面のようだ 辺りには 香ばしいにおいが 充満している ── 落ちている石ころですら、いい香りがする。
ダンジョウは 顔を曇らせた テンムスが気になり どうしたのか聞いてみた わたしたちの 乗っていた機械は ああ見えても 生命を持っているんだ いま ひとつの生命が 潰えてしまった しようがなかったとはいえ こころが痛い テンムスのもつ勾玉光輪は 棘のよう…
沼の側には たくさんの木が 生えていて そこには 貝のような 殻を纏った 木の実がたくさん 成っていた そのままでは とても硬くて 歯が折れてしまうが 割って食べれば 最高の栄養だ ── 反対から読むと、また違う意味になる言葉は多い。
ガムで出来た 地図をひらげて お宝の在処を 確認する どこにも載って いない場合 地図を口に押し込んで 咀嚼する 口に拡がる 滑らかな風味 どおりで たくさん穴が 空いていると 思ったもん ── 発酵の過程で、お宝の在処は忘れさられてしまったようだ。
蜂型機械の襲撃を 切り抜けたものの 防壁迷宮を出ると そこは足場ひとつない 断崖絶壁だった 飛び跳ね機械に乗ったまま 勢いよく降下するふたり ダンジョウはもう 生きた心地がしなかった 一方のテンムスは 冷静に状況を把握し 事態の収拾を 図ろうとしてい…
捨てろ 捨てろ 人間の 飲んでいい ものじゃない 沼の水だ 使うなら 充分濾過して よく煮詰めてから 使うんだよ そのまま飲んだら 身体に悪いよ ── 原液は、不純物だらけ。
シャーベットの 敷き詰められた箱庭 そこには 指先の木を 気にしている 雪だるまがふたり ささくれ立った 指を見て 嘆いている こんな綺麗な 箱庭にいるのに 意識は指先に 向いている ── 環境が恵まれていても、気づかない者は多い。
レンガ造りの壁を どんどん開いて 都市部を目指すふたり 途中幾らか 蜂型機械たちと 出くわしながらも 難無く無事に切り抜けていた テンムスの直感では もうすぐ都市部が 近いと言う おそらく最後と思われる 防壁の前に立ったが そこには レンガ造りの壁は …
海底火山で 熱せられ 海は今にも 蒸発寸前だ 魚があちこちで 茹であがって タコやエビも 真っ赤になっている 塩も相まって いい出汁が 出ているだろう これは自然界の 最高級スープだ ── 火傷しないよう、気をつけて。
防波堤は 霜のガラスで 覆われている その先の海は まるで 水族館のようだ ぼくらの 思っている以上に 霜のガラスは 頑丈で そこから先には どう足掻いても 行けないのだ きみとぼくの 距離感と同じだ ── 近くにいても、こころを阻むもの。
テンムスが乗っていたような 小型の機械の大群が 空を飛びながら こちらへ向かって来ていた よく見ると 蜂のような形をしており 尻には針も しっかりついている ダンジョウはそれを見た瞬間 脚元が凍りついてしまった テンムスがまたもや一喝すると 少年は我…
悲しいときには 裏腹に 笑っている神も 居たりする 嬉しいときには 裏腹に 妬んでいる神も 居たりする バランスを取る為に 必要だけれど 絶対に表に出ないように 顔は反対の 表情を浮かべて ── すべて同情するなんて、難しい話だ、
神さまはなんて 意地悪なんだ そんな言葉を 耳にする けれども神は あなたの神は あなたの神よ 彼らはみなに 平等なのだ 平等に傷つけ 平等に与える 我々には 悲しいときに 涙を流し 嬉しいときに 笑うことしか出来ない すべてはあなたの 世界の出来事なのだ…
レンガみたいな壁が スライドパズルみたいに 開いたんだ テンムスにはにわかに 信じ難い話だった 壁がそんな風に開くなんて ましてやこの迷宮は 都市の防壁である そんな簡単に開いてしまえば 却って困るのだ テンムスは落ち着いては 居られなかったが 考え…
実験結果は 予期せぬもので あるから面白い その結果に なるように 行うことは 実験とは言わない 誰も見たことのない きみだけの実験結果を 教えておくれ ── 調べても、どこにも載っていない。
身体は刺激を 感じなくなると どんどん歪み 肥大してゆく 日々違った 刺激を与えることで その形を 保つことが出来る ナレサス きみは刺激を 無くする為に 敵国から送られた 刺客だな ── いつの間にか、習慣になってしまうもの。
このまま前に進めだなんて 少年は無性に やるせない気分に陥った さっき見せた力は きっとあなた自身の持つ力よ そんな弱気ではこの先 生きて行けないわ それでもくよくよする少年に テンムスは一喝した もういい このままここで のたれ死んじゃえばいいわ …
身体に仕組まれた 爆弾が爆発しそうだ 起爆装置を 爆破しないと 誰が持って(い)る 誰か持って(い)る 起爆装置の ボタンは押すな 押さずに そのまま わたしに渡せ さもなくば お前の心臓 爆発するぞ ── みんなもっている、爆破スイッチ。
何かを得るためには 痛みを伴うことも多い 乗り越えたその先に 待っているもののために きみは痛みに 耐えねばならない 楽して手に入る宝はない 近道なんてものも もちろんない 寧ろ遠回りする方が 宝の在処への 近道だったりもする ── どんな苦痛でも、耐え…
来た道がない ダンジョウは落胆した さっきの爆風で 壁が吹き飛んでしまったのね テンムスは悲しげに言った ぼくはどうやって帰れば 少年に後戻りをする 方法は現時点では 存在しなかった 足元が 永遠に沈んでゆくような 絶望を感じながら ダンジョウは テン…
面倒臭い 面倒臭い やることなすこと 面倒臭い そんな面倒臭がりさんたちは ゆくゆく身体を失って 標本のなかへ入れられて 魂だけの牢獄で過ごすだろう 一生懸命生きなかった罰として 無期懲役を言い渡す ── 罪の意識がないから、なおさら厄介だ。
どこもかしこも べっこう飴で コーティングされた みたいに てかてかしている 序でに夜空も映して きらきらしている 砂金でも混じったように 月の光を浴びて 輝いている ちょうど色味も べっこう色だ このまま舌をつけて 舐めてみたいけれど きっと離れなく…
わたしは地底人 人間だけれど あなた方地上人とは 少し違うわね あなた方の使う 五感が少し不自由な代わりに 第六感以降を使えるの あなたこそ何者なの 勾玉光輪のあの光はなに 首のたくさんある 龍にも見えた まるで地底帝国に伝わる 伝説と同じみたい テン…