ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

道は前にしかない【1-4-4】

来た道がない

ダンジョウは落胆した

さっきの爆風で

壁が吹き飛んでしまったのね

テンムスは悲しげに言った

ぼくはどうやって帰れば

少年に後戻りをする

方法は現時点では

存在しなかった

足元が

永遠に沈んでゆくような

絶望を感じながら

ダンジョウは

テンムスに懇願した

ぼくを地上へ帰してよ

父さんきっと

ぼくを探しているよ

きみならすごい力を

持っているから

出来るでしょう

テンムスは目を瞑り

わたしにも

出来ることと

そうでないことはあるのよ

今あなたを

地上に帰すことは出来ない

どうやって入ったのか

知らないけれど

あなたは迷宮壁のなかまで

来てしまったのだから

ダンジョウはその場に

崩れ落ちた

あなたに出来ることは

ただひとつ

目の前にある道を

ひたすら進むことよ

そしたらいつか

地上へ戻れる日が

来るかもしれない

ダンジョウの目の前には

ぼんやりと光る石だたみが

延々と続いていた


── 絶望を照らすわずかな明かり、地底帝国の詩。