ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

刃の精神【8-1-2】

しゅうううう 何かが蒸発するような音が 無駄に広い空間に 水蒸気とともに拡がっている やったか 何も見えない 念のため 出来るか分からないけれど やってみる 何をやるんだ 彼らが人間だったものであるのなら 彼らのなかにも 精神が宿っているはずだ ダンジ…

飛び散る爆発【8-1-1】

ダンジョウは 勾玉に心力を流し込み その光で作った 風船を操っていた 何やらなかには 液体のようなものが 入っている ギロチヨも同様に 不格好ながらも 風船を作っていた 歩く包丁たちは 一斉に動き出した その瞬間を待っていたとばかりに ダンジョウとギロ…

風船配りのピエロ【7-4-4】

どうして戻るんだよ ダンジョウが不服そうに アサツキへ八つ当たりした きみは勾玉のバリアを張って 刃物攻撃を防ごうとしたかもしれないが そんなことしたら きみの首は こう だぞ アサツキは首を掻っ切る ジェスチャーをした やってみないと分からないじゃ…

上の階【7-4-3】

この場所には 階段など存在しなかった 本当に閉じ込められたまま 生活しているのだということを ダンジョウは実感した 出られるのは月に一回だけだ この運搬用エレベーターから 上の階へ上がることとなっている もちろん 見ての通りこのサイズだ エレベータ…

地底の世界【7-4-2】

きみたちの住む世界が 退化している世界ならば 我々の住む世界は まるで監視社会そのものさ 高度な技術が人を不自由にするのは どの世界でも同じだ どこにいても 誰かに見られているような 感じがしてならない もっとも 中央都市部に住む連中の 一族なんかは…

ダンジョウの世界【7-4-1】

ダンジョウはアサツキに 得意げに自分の居た 地上の話をした そこには青い海があって 緑豊かな木々が生い茂っていて 鮮やかな空がある 鳥も飛んでいるし 飛行機や車も走っている まるで昔読んだ おとぎ話の絵本そっくりじゃないか でもここの技術は 地上なん…

マテリカンの葛藤【7-3-4】

今更何しに来たんだよ 元同僚のマテリカンたちが ゾニィに詰め寄った 途中だったプロジェクトを投げ出して あとはおれたちに放り投げて 自分は好き放題やっているのかよ お前が居なくなって おれらがどれだけ大変か 分からないだろうな オレは好き放題やって…

入り口探し【7-3-3】

白衣を纏ったゾニィを 盾にするように テンムスたちは 研究棟を練り歩いた しかしながら 鏡の断片のある部屋へ続く 入り口はどこにも見当たらなかった このフロアは隈なく探したけれど 入り口は見当たらないわ 別のフロアを探しましょう そしてダンジョウた…

変装【7-3-2】

テンムスは 扉の死体に隠れながら テレパスでゾニィへ 信号を送った 彼はあなたと同じマテリカンよ 今のこの状態だと かなり動きづらいから ちょっと白衣を拝借なさいよ またあの白衣に袖を通すと思うと 気が引けるゾニィだったが これも目的達成のためだと…

扉もどき【7-3-1】

この扉は恐らく 何らかの生き物だったに 違いない 心力を感じ取ることが 出来たのも その所為だろう ただ元が何の生き物だったかは 恐ろしすぎるので 考えないでおこう 扉は絶命したようで べろべろに床に野垂れた しかしその先に 部屋のなかは見えず 壁が一…

聖水の発見【7-2-4】

ぐっ テンムスの身体は みるみる内に扉に 取り込まれてゆく そうか 心力でロックされているのではなく これ自体が生物だったのか テンムス ゾニィが手を伸ばし テンムスを引き戻そうとしたが 扉のパワーには 手も足も出なかった オレらがいなくなった間に こ…

開かずの扉【7-2-3】

テンムスたちは困り果てていた 鏡の断片のある 部屋の前まで来たというのに 肝心の扉が開かないのだ テンムスは扉を隈なく 調べてみたが パスワードの文字盤も 重く厳つい錠前も どこにも見当たらなかった やはりこれは 誰かの心力で 固く閉ざされているに …

罠の解除【7-2-2】

ダンジョウたちは アサツキを人質に取りながら 研究棟内を見つからないように 移動していた 研究員に見つかりそうな時は アサツキに対処してもらいながら 自分たちは少し離れたところに 隠れていた 我ながら汚いやり方だと思ったが そうする他 良い方法はな…

センサー主電源の在処【7-2-1】

ダンジョウたちは アサツキを人質に取って センサーの主電源の場所まで 案内してもらうことにした アサツキは 断末魔の叫び声を上げる検体に 長期作用型の麻酔を注入してから 案内を始めた その前に ダンジョウは部屋にある 監視カメラを 交信を通じて破壊し…

人質取り【7-1-4】

ダンジョウとギロチヨと 構成員のひとりは 培養液に沈んでいるため 目を開けることが出来なかった そのため ダンジョウが気配を察知し 出てくることを合図として 他のふたりも出る算段のようだ 慌てて入って来た研究員が ダンジョウの入った 培養液カプセル…

生体実験室【7-1-3】

ダクトは 生体実験室へ向かって 伸びている ダンジョウとギロチヨ その他の構成員は 息を潜めながら 道なりに進んで行った ダクトの先から 部屋のなかを 観察してみると 人の気配はない 降りてみる 気をつけろよ ダンジョウは先陣を切って 生体実験室へ降り…

ダンジョウとギロチヨ【7-1-2】

ダンジョウは ゾニィ暴走族の 副族長を務める ギロチヨとバディを組み その他数名の構成員とともに レーザーセンサーの 主電源を探した ギロチヨさん でしたっけ ぼくはダンジョウです よろしく さっき聞いたよ ぶっきらぼうで しかもゾニィよりも背が高く …

レーザービームの網を潜って【7-1-1】

全員で動くと小回りが気かねぇからな こっからは二手に分かれるぞ オレとテンムスとお前らは こっちだ ダンジョウとギロチヨとお前らは そっち 勝手に決めるなよぅ オレ様はこんなかで恐らく いちばん年長だぜ 年長者の言うことにゃ従うってもんだ テンムス …

鳥籠からの脱出【6-4-4】

ただ ここからどうやって 出るんだよ ゾニィが怪訝な顔をした 部屋は低い天井に遮られ 窓なども見当たらなかった 一瞬だったけれど 落ちるとき この空間の上側が開いていたのを ぼくは見たんだ だから 押してダメなら ダンジョウが ぐいと天井を押したがびく…

経路の作成【6-4-3】

ダンジョウは 床に両手を置くと そのまま交信を始めた 彼の目には星海が映り込み 周りには不思議な光が 渦巻いていた その最中 ゾニィは物思いに耽っていた コルネの言葉なんて 気にしなくても良いわよ あなたはここに来た時点で 負け犬なんかじゃない ゾニ…

引き金を引く勇気【6-4-2】

おやおや ゾニィくんじゃないか 今頃何しにここへ来た コルネインダストリ取締役社長 コルネ・コロネット オレたちは お前に復讐しに来たんだぜ ゾニィはコルネを見下ろしながら言った 鏡の断片はどこにあるの テンムスが勾玉を構えながら言った 鏡の断片 あ…

ロビーにて【6-4-1】

暴走族一味とダンジョウ一行は 公社のロビーへ 強引に突っ込んだ 大胆不敵なその方法は 居合わせた人々に 混乱と恐怖を植え付けた 逃げ惑う公社の社員たちを横目に 族長のゾニィは ハンドガンを構えて 辺りを威嚇した おい 取締役を出せ 受付嬢を恐喝し 社長…

騎馬とバイク【6-3-4】

テンムスはゾニィのバイクに ダンジョウは他のマテリカンの バイクに乗った だがしかし ゾニィの言った通り ひとり乗りなので ほぼライダーに しがみついているような 状態に近かった 背後からは 追って来た黄金騎士団の騎馬が 三体ほど走っていた で 公社へ…

暴走族長ゾニィ【6-3-3】

向こうからカスタムしたと思しき カタツムリ型バイクに乗って 暴走族が近づいて来た ダンジョウは息を呑んだが 他のふたりはただ黙って その一部始終を観察していた 近くに寄ってくると 彼らの身長は ゆうに二メートルを 超えていることに気がついた 全員ダ…

暴走族との接触【6-3-2】

ダンジョウは 公道を駆け回る 暴走族へ向かって 大声で叫んだ すみませぇん その声は バイク型マシンの 増幅エンジンの爆音で かき消された なんでもよく見ると それらのマシンは 上下逆さまになった カタツムリみたいだ ちょうど殻が下になって なかに勾玉…

ヴィジョンを頼りに【6-3-1】

でも大きな交差点が見えたぞ あと暴走族も そこへ行ったら何か 分かるかも知れない ダンジョウは意気揚々と ふたりを道案内した あとのふたりは ダンジョウの発言に きょとんとしながらも 後をついて行った 博士 暴走族って何だと思う? 文字から推察するに …

公道の脅威【6-2-4】

ダンジョウの瞳には 一瞬星海が映り込んだが 次の瞬間には 別人の瞳だった それはまさしく ダンジョウの深緑色の 瞳ではなかった もしかして またやったの なにをじゃ マインドダイヴよ ダンジョウは 急激なスピードで そんなことも 出来るようになっている…

黄金騎士団の噂話【6-2-3】

街には地上と同じく 道路が走っており 自動車というよりかは 自転車のようなものが 走っていた しかしながら 自転車よりも 幾らかハイテクな感じがした 遠目でみると 勾玉が前輪の役目を 担っているようだった 皇務の際に来た以来だけれど 結構目覚ましい進…

東の都市【6-2-2】

基礎的な修行を終え 地上と地底の境目にある 龍脈領域を抜けた ダンジョウ一行は ポータルを通って 東の都市の地を踏んだ 地方が変わるだけで こんなにも街並みが変わるんだな ここは地底帝国内では有数の都会よ テンムスが自慢げに話した こんなにごみごみ…

ポータル際の別れ【6-2-1】

聞き覚えのある声の主は タヅクリ博士だった どうやってここまで やって来たのだろう 三人は疑問で頭が いっぱいだった この空間のなかだけの ポータルが存在するのだ クズキリが 三人の抱えている疑問を 即座に払拭した ここのみならず 地底世界には地上と…