ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

刃の精神【8-1-2】

しゅうううう

何かが蒸発するような音が

無駄に広い空間に

水蒸気とともに拡がっている

やったか

何も見えない

念のため

出来るか分からないけれど

やってみる

何をやるんだ

彼らが人間だったものであるのなら

彼らのなかにも

精神が宿っているはずだ

ダンジョウは交信を始め

歩く刃物たちに

精神ハックの標準を定めた

普段の様に

精神の糸を掻い摘み

ダイヴしたが

その精神は

酷く汚染されていた

もう普通の人間の精神ではなかった

あらゆる負の感情が

ダンジョウを襲った

視界も真っ暗で

頼れるのは感覚のみ

そして身体中が

焼けつくような痛みを感じた

耐え難い感覚に

ダンジョウは心力を

すり減らしながらも

辺りの状況を把握しようとした

この他のふたつの個体は

同じ種類の

これは刃人間だ

しかしあと一体は

その瞬間ダンジョウは

霧のなかから物凄い殺気を感じた

精神ハックを中断した瞬間

水蒸気の霧のなかでは

鈍く何かを貫く音が聞こえた

ダンジョウ何があった

ギロチヨが慌てて声をかけた

四体のうちの一体は

明らかに違う何かだ

ダンジョウは息を荒立てながら

掠れた声で呟いた


── 霧のなかに潜むもの、地底帝国の詩。