ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

副官シュトレーン【8-1-3】

お見事お見事

がしゃりと

歩く包丁の倒れる音がすると

霧の奥からは

手を叩く音が聞こえた

ほら

隠れていないで

出ておいでな

声の主は

猫撫で声で

ダンジョウたちを

挑発した

わたしの名前はシュトレーン

司祭パウンド様の副官のひとり

きみの名前はパウンド様から

聞いているよ

ダンジョウくん

行くなダンジョウ

殺される

いや

多分大丈夫だ

さっき一瞬だけれど

刃の手が緩まった感じがあった

寧ろ目的はぼくかも知れない

ぼくが引きつけるから

その隙に鏡の場所まで行って

しかし

早く

シュトレーン

ぼくに用件があるのだろ

おぉこれはこれは

お目にかかれて光栄ですね

ひとり

なわけないよなぁ

ネズミが三匹ばかしいるじゃないか

その瞬間

ギロチヨたちの近くで

弱っていた歩く包丁が

急に動き出した

貴様ら動いたら全員殺す

ダンジョウくん

わたしと駆け引きをしないか

ダンジョウは息を呑んで

身構えた


── 襲い掛かるプレッシャー、地底帝国の詩。