ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

暴走族長ゾニィ【6-3-3】

向こうからカスタムしたと思しき

タツムリ型バイクに乗って

暴走族が近づいて来た

ダンジョウは息を呑んだが

他のふたりはただ黙って

その一部始終を観察していた

近くに寄ってくると

彼らの身長は

ゆうに二メートルを

超えていることに気がついた

全員ダンジョウの三倍はあった

やっぱりマテリカンの集団ね

マテリカンって何さ

わたしたちの世界にいる

高度な知能を持った種族よ

ただナイーブな気質のものが多いから

何かの拍子に

衝動的な行動をとりがちね

彼ら普段は温厚だから

こんなんなるって

余程ショックな出来事が

あったのでしょう

博士も隣で静かにうなづいた

よおねぇちゃん

オレたちの頭に声をかけてきたのは

あんたか

黒いヘルメットが

テンムスを覗き込んだ

そうよ

ちょっと助けて欲しくて

今騎士団に追われているんだよ

そんなヒマないぜ

公社に用があるのだけれど

テンムスは何故かしたり顔で言った

その名前を二度と出すな

黒いバイザーを上げると

青白く黒目がちの大きい目が現れた

まさしく昔テレビで見たような

宇宙人のそれと同じような顔だった

このまま尻尾を巻いて逃げるの

テンムスはまたもや挑発した

だあああ乗りな

オレはこの族の長ゾニィだ

一人乗りだからしっかり掴まっていろよ

じいさんはタクシーにでも乗っとけ

そして義理堅い

テンムスはダンジョウの脳内に囁いて

背後を振り返ってウインクした

遠くから黄金騎士団が迫っていた

こらぁ年寄りを置いてくなぁ

タヅクリ博士が歩道で怒鳴っていた


── 市街地でのチェイスが始まる、地底帝国の詩。