ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

終末のヴィジョン【10-2-1】

なんだったの

あれ

テンムスが

異様に怯えていた

何か見えたの

あのおばあさんに

テレパスを送ったとき

少しだけだけど

断片的な映像が

頭のなかに入って来たの

何かのお祭りをやっていて

黒い巨大な影が

ものすごく巨大だった

今まで見たことのないような

そしてとても邪悪だった

あんな言葉を聞いたからじゃない

気のせいだよ

そんな現実

あるわけないよ

そう言いつつも

ダンジョウは内心不安だった

なんだろう

今の話は単なる話なのに

この引っかかる感じは

こころの奥底から

浮かび上がってくる

この気味の悪い感じは

なんなのだろう

まるでそんな現実が

本当に来てしまうような

ふたりはまた

集会場のような場所を見つけたが

結果は同じだった

老人たちが

まばらに座っていて

視線は一方向を見ている

皆口々に同じことを話す

やっぱりこの街おかしいよ

狂っている

ダンジョウは投げやりに言った

でも鏡はこの場所を指している

これでもきっとどこかに

断片があるのよ

希望を捨てないで

テンムスの言葉に

ダンジョウはやりきれない顔をした

一方タヅクリ博士は

UFOに乗って上空から

下の街の景色を眺めていたが

人通りが全く持って

ないことに驚いていた


── 闇夜に沈む湖畔のように、地底帝国の詩。