ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

開かずの扉【7-2-3】

テンムスたちは困り果てていた

鏡の断片のある

部屋の前まで来たというのに

肝心の扉が開かないのだ

テンムスは扉を隈なく

調べてみたが

パスワードの文字盤も

重く厳つい錠前も

どこにも見当たらなかった

やはりこれは

誰かの心力で

固く閉ざされているに

違いなかった

ゾニィに思い当たる節を

聞いてみたが

研究員のなかには

そのような呪詛術師のような

存在は居なかったという

思いつく方法は潰えたので

ダンジョウにテレパス通信を繋いだ

そういえば

祭壇の裏口も

そんな仕掛けがされていた気がする

それはどうやって開けたの

いやそれが覚えていないんだよ

完全に無意識だったから

あと変わった状況と言ったら

マシンに乗っていたことかな

そうありがとう

彼はやはり何かとてつもないものを

内に秘めているに違いない

テンムスは改めて確信した

心力でロックしているのなら

本体はそこまで遠くには居ないはず

ゾニィ

この周辺は何の部屋なの

ダンジョウがインストールした

研究棟の地図を見ながら

テンムスが問いかけた

ここら一帯はオレの知る限りでは

全部物理実験室だぜ

空き部屋もなく

研究員も白と考えると

その瞬間

扉についていたテンムスの手が

みるみる内にめり込んで行った


── 奇妙な扉、地底帝国の詩。