ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

束間休息【15-3-1】

プラントの一件から数日後

ダンジョウとタヅクリ博士は

運良く宿に泊まることが出来た

西の都市は観光客が

絶えず往来しており

宿をとるのは至難の業なのだ

 


ダンジョウはベッドに突っ伏していた

地底の人々は交信で

体力を回復するが

寝床は休息用として必要不可欠だ

彼らはソファのように

それを利用する

 


タヅクリは

勾玉にダウンロードして

投影したニュースを眺めていた

何やら西の都市は

新しい機体を開発したらしいと

報じられていた

 


 すごいぞこれは!

 なになに?

 入るだけで疲れが飛んでゆく代物か!

 たしかに交信がうまく出来んものに

 とっては便利な道具じゃなぁ

 細胞も活性化されるそうじゃ

 のぉ、ダンジョウ!

 明日お披露目会が行われるようじゃ

 気晴らしに行ってみんか?

 

 …いいよ、博士だけで行っといで

 なんでこんな時にそんなに

 元気で居られるんだよ…

 


ダンジョウは

ウナージュを救えなかったのと

テンムスの行方が分からないのとで

自分と今の状況に嫌気が差していた

 


 こういう時こそ

 笑顔を忘れてはいけんのじゃよ

 笑っていれば

 きっと良いことが起きるんじゃ

 お主もそんなしけた顔してないで

 笑ったほうが良いぞ〜

 


タヅクリ博士は

ダンジョウの顔をこねくり回して

無理矢理笑顔を作らせた

 


 そういえばテンムスは

 お主に何か寄越さんかったか?

 

ダンジョウは思い出したように

リュックのなかを確認した

衣装屋微笑でテンムスが着替えた時

鏡の断片を持っているよう

言われていたのであった

断片は次の断片の在処を

指し示していた

 


 けど、これの先にテンムスが居なかったら

 どうする?

 


 なぁにを言っとるんじゃ

 お主らしくないのぉ!

 取り敢えずやってみるのが

 お主じゃったろうに!

 


 うん…そうだったね

 


ダンジョウは力なく返事すると

支度を始めた

 


 んじゃ、取り敢えず出発しよう

 


── 笑う門には福来る、地底帝国の詩。