ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

休息用蛹【15-3-2】

翌日

巡査部長のシャッケイは

有給休暇をとって

未来博覧会へ来ていた

 


昨日

タヅクリ博士が

勾玉で見ていた場所だ

 


何より注目は

新型休息ポッドの体験会である

イモムシカーのノウハウを用いて

開発された次世代機器だ

若返りなども期待されていると言う

ポッドに入る前には

同意書の記入が必要である

一応コールドスリープ状態になるらしく

その間、何が起きても文句は言えないのだ

 


身体の不自由なひとや

病気の寛解を目的とした人々が

たくさん集っていた

 


 あなたがはいるのではないようですね

 


シャッケイは受付の女性に問いかけられた

 


 えぇ、彼女

 寝たままなんです

 何しても起きなくて…

 少しの可能性に賭けてみたくて

 ここに来ました

 


彼は寂しげに言ったものの

どこか曲がらない信念のある言葉筋だった

 


 それではお入りください

 


休眠ポッドは開かれ

待ちに待った瞬間が訪れた

 


各々期待に胸を膨らませ

ポッドのなかへと入った

 


シャッケイも背中に背負っていた女性を

ポッドのなかへ静かに横たえた

 


ポッドの扉がゆっくり閉まってゆく

シャッケイの顔は少し歪んだ

 

 おやすみ…ウナージュ…

 


── 魂の記憶は戻るのか、地底帝国の詩。