ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

輪廻転生【15-2-4】

ウナージュは来る日も来る日も

彼のことを思い出した

けれども来る日も来る日も

彼は帰っては来なかった

途方に暮れていた彼女は

彼の死因を突き止めようとした

あの時同じ場所で

彼が関わっていた人物

流石に個人で調べては

きっと彼の二の前になるだろう

 


彼女は昔厄介になっていた

公安警察に入ることを決意した

彼の未練を晴らすため

警察学校での辛く苦しい訓練にも

果敢に立ち向かった

 


彼女は

警察学校を主席で卒業し

晴れて公安警察の一員となった

 


配属された先には

サンショウと瓜二つの男性警官が

居座っていた

彼とは性格が真逆なものの

面影は彼とそっくりだった

彼女のなかには

安心感と奇妙な感覚が入り混じっていた

 


彼女の凍った心臓は再び動き出し

また温かい血液を

身体全体に運んでゆくのだった

空っぽだったこころも

少しずつ満たされていった

 


いい上司にも巡り会えた

複雑だが

彼と瓜二つの同僚もいる

わたしの居場所がここにある

みんな待っていてくれる

 


そして今

まさに彼の腕のなかにいるのだ

 


ダンジョウは

涙でウナージュの顔がぼやけたが

彼女は笑っているようにも見えた

彼は最善を尽くしたが

これ以上出来ることは無かった

 


 ごめんなさい…

 ごめんなさい…!

 


ダンジョウは涙をぼろぼろこぼしながら

謝り続けた

涙を流すダンジョウに

シャッケイの拳が飛んで来た

思い切り飛ばされたダンジョウは

タヅクリ博士に受け止められた

 


彼は博士の胸のなかで

泣きじゃくった

 


シャッケイはダンジョウを

殴り飛ばした手で

そのままウナージュの顔を

やさしく撫でた

透き通るような肌には

パイプの水の水滴が

何滴か微かについていた

水滴は徐々に増えてゆき

やがて雨粒のように

大きくなった

 


ウナージュは黒目がちな瞳で

やさしく微笑むと

シャッケイの顔を撫でた

親指で涙を拭って

 


 あなたにあえて良かった…

 わたしのこころを救ってくれた…

 顔には絶対出さないけれど…

 あなたの思っていること…

 感じていること…

 何故かわたしには分かったわ…

 不思議ね…

 

ウナージュは絞り出すような声で

シャッケイに語りかけた

 


 来て…

 


ふたりは静かに口づけを交わした

 


 もし…生まれ変わったら…

 わたし…また…

 きっとあなたに…会いにくるわね…

 約束…ね……

 


シャッケイと指切りした直後

ウナージュは力なく生き絶えた

 


シャッケイは嗚咽混じりに

彼女を強く抱きしめて

床へ塞ぎ込んだ

 


その日

珍しく西の都市には

雨が降ったらしい

 


── もしも生まれ変わったら、地底帝国の詩。