ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

情報漏洩【14-1-2】

気絶していた店主が

目を醒ました

 


 お目醒めかな?

 


コヴがやさしく問いかけた

眩しいのか

店主はやたらと

顔を影に背けたがった

 


 単刀直入に聞くが、

 この店の上には誰が居る?

 何らかの組織と

 絡んでいる可能性が否めんのだが…

 


 俺は何も知らない

 唯の衣装屋の店主だ

 


ダンジョウは

会計前の床で寝そべる

パオの死体を見てギョッとした

 


 え?

 人死んでる?

 誰がやったの?

 


ウナージュは首で店主の方を指すと

ダンジョウは複雑な顔をした

怒っているようにも

悲しんでいるようにも

笑っているようにも

悩んでいるようにも見えた

 


 "なに?この子の表情

 感情が読めないわ…"

 


ウナージュはこころのなかで怪訝に思った

 


ダンジョウは

突然交信を始めると

精神ハックの体勢をとった

 


店主は彼と目線を合わせると

精神をハッキングされた

 


 ソコの引き出しの奥の方ニ、

 流通経路ノ場所を記した勾玉があル

 ソノ場所へ行けバ、何か分かるだろウ…

 引き出しのカギは俺の腰についていル

 


まるで操られたかのように

突然カタコトの言葉で

自白を始めた店主を見て

公安警察ふたりはゾッとした

テンムスと博士は"あちゃ〜"と

手で顔を抑えた

 


 俺は今何を話した…?

 お前…俺に何をした…?!

 おい!そこのガキッ!!

 俺に今ッ、何をした…ッ?!!

 


ダンジョウは背後を振り返らずに

 


 あなたが勝手に話し始めたんです

 ぼくは何にもしていません

 悪い人には

 悪いことが起こるのは

 この世の中の法則ですから

 


その声色は無機質そのものだった

これを聞いたテンムスも

彼の感情を読み取ることは出来なかった

明らかに彼のなかで

何か彼自身とは別のものが

芽生えてしまっているような

そんな気がしてならなかった

 


ウナージュは錯乱した店主を

戸惑いながらも手刀で黙らせると

彼の言う通り

腰についた引き出しの鍵を外して

奥の引き出しへ向かった

 


── 思ってもみないところから情報は漏れ出てしまう、地底帝国の詩。