ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

人命救助【15-2-1】

ウナージュは

口から血を流しながら

その場に崩れ落ちた

 


 ウナージュ!!

 


シャッケイはすぐさま駆け寄ると

彼女を抱き上げた

 


 しっかりしろ!!

 なんてこった…!!

 


シャオビンは

チュローズの持っていた

鏡の断片を即座に拾い上げ

空間切開チョークで開けたホールに

飛び込んだ

 


 ま、待ちなさい!!

 


テンムスはシャオビンに続いて

ホールに飛び込んだ

 


 テンムスぅぅぅ!!

 


ダンジョウは叫んだが

ホールは閉じてしまった

 


彼は後ろ髪引かれる思いで

シャッケイたちの方を振り返ると

血を流すウナージュの姿が見えた

 


ダンジョウは何が起こったのか

状況を飲み込むのに時間を要した

 


 ウナージュさん!!

 


 あわあわ

 


タヅクリ博士はあわあわして

その場で地団駄を踏んでいた

 


 ちょっと失礼

 


ダンジョウは

ウナージュの心臓付近に手をやった

 


テンムスが重傷を負った時のように

細胞のひとつひとつに入り込み

延命措置を行った

しかしながら

今回は傷が深すぎた

チュローズの薔薇の針は

心臓を見事に貫通しており

これを引き抜くと

確実に出血多量で死に至る

しかしそのままにしておいても

ショックで死んでしまう

どちらにせよ

死の運命から逃れることは

出来なかった

 


 おい、何やってるんだよ!

 助けられるのか?!

 中途半端なことしたら

 ぶっ飛ばすぞ!!

 


ダンジョウはウナージュの

心臓の細胞に触れると

いつかの記憶が

鮮明に頭に流れ込んできた

 


── 消えゆく生命の鼓動を聴いた、地底帝国の詩。