ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

師範と博士【4-1-4】

そこには

若い男が立っていた

また老け込んだな

タヅクリよ

そう言う

クズキリ兄さんは

若い時とあんまり

変わらないの

このふたりはどう見ても

兄弟ではなく

孫と祖父にしか

見えなかった

クズキリは

テンムスを視界に

入れた瞬間

静電気のような

空気感へ変貌した

この傷はパウンドだな

それともうひとつ

これは誰だ

細胞に侵入した形跡を

感じるが

詮索することが出来ない

一応ぼくが

ダンジョウは

申し訳なさそうに

手を挙げた

テンソヴァか

いや居る訳はないな

きみは何者だ

ぼくは地上から

迷い込んだ人間です

テンムスには危ないところを

助けてもらいました

きみがこの応急処置を

クズキリが驚くなか

テンムスは

静かに目を開けた


── 身体は歩んだ人生をも表す、地底帝国の詩。