ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

芽吹く猜疑心【5-4-4】

テンムス

ダンジョウはひとこと

静かに呟いた

テンムスはどうやら

何者かに何かをされたらしく

激しい痛みを訴えていた

誰にやられた

これは自分の所為なの

だから自分でカタをつけなくちゃ

語尾に覇気がない

真実を見ていない限り

この状況では

誰かに何かをされたとしか

思えなかった

クズキリの言っていた

罰ってこれのことなのか

だとしたら

人間のやる所業ではないぞ

ダンジョウはこの瞬間を以って

テンムス以外の人間に

警戒心を抱いた

しかしながらテンムスにも

若干の疑念を抱いていた

クズキリがどこからともなく

音も無くやって来て

のんびりしている暇はないぞ

ついて来い

そう言って

足早に歩き始めた

ダンジョウは

テンムスの肩を担いで

クズキリを睨みつけた


── 疑念が疑念を呼ぶ、地底帝国の詩。