ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

廻る人生【4-4-4】

クズキリは

ダンジョウが落ちたことに

気がついていたが

特別な動きは取らなかった

テンムスもホージも気がついたが

どうしようも出来なかった

テンムスは

おのれの無力さを悔やんだ

ホージは平然と

状況に身を委ねていた

崖の足場が

視界から遠くなる

一瞬が何年も続いているかのような

そんな不思議な感覚を

ダンジョウは体験していた

おれはこのまま死ぬのか

少年の頭には

今までの人生に於ける

大事な場面が

走馬灯のように渦巻いた

何もしないまま諦めるのか

不意に父の言葉が

頭のなかに響き渡った

自転車に乗れずに

その場にへたり込んでいた

ダンジョウを見かねて

父が放った言葉だ

可能性がほんの少しでも

残っているのなら

その可能性に賭けてみろ

そうすれば

どんな不可能と言われることでも

可能にする力が湧いてくる

おれは今

可能性を背中に背負っている

勾玉光輪に手を伸ばしたダンジョウは

勢いよく光の刃を発現させ

プロペラのように回転させた

浮力が徐々に

ダンジョウの身体を持ち上げていった


── 可能性と自信と、地底帝国の詩。