ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

隠し持った凶器【3-2-2】

素っ頓狂な金切り声をあげて

パウンドはここが

エジプトなどではないことを

捲し立て始めた

テンムスはもちろん

聞いていなかったのだが

その間ダンジョウヘ向けて

テレパスを繋げようと試みたが

この祭壇のなかでは

そういった外界へ

干渉する類のものは

すべて遮蔽されているらしかった

まいったなぁと

困り果てたテンムスだったが

竜人間の持っていた

勾玉光輪を隠し持っていたので

何とかなるだろうと思った

幸いにも手荷物検査の際には

見つからなかったのだ

テンムスは後ろ手に

拘束されていたが

背中に隠し持った

勾玉光輪を取り出すには

良い位置だった

パウンドの他愛もない話が

一区切り着くと

テンムスは凶行に出た

ダンジョウから借りた

服の下から

そのまま勾玉光輪の

光の刃を発現させ

護衛についていた傭兵を

ふたりほど切り刻んだ

先代より受け継いだ

体術を駆使しながら

その周りを取り囲んだ

傭兵たちも瞬く間に

薙ぎ倒して行く

地上人と認識していたことが

彼らの反応をより遅れさせたのだ

光の刃の切先は

パウンドへ向けて

放たれようとしていた


── ポケットの中身を知るのは己のみ、地底帝国の詩。