ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

奈落からの手招き【4-4-3】

崖に続く道は

実際に足を乗せてみると

遠目から見るよりも

幅がないように感じた

その上

奈落の底から

見えない手が

身体を引っ張っているような

そんな感じすらする

ダンジョウは

注意深く足を踏み入れ

音も立てぬよう

抜き足差し足で歩いた

終始へっぴり腰ではあったが

少しずつ進んではいた

着替えは済んでいたものの

テンムスから勾玉光輪を

預かっていた

それを背中に背負っているため

赤ん坊ひとり分くらいは重たかった

ほぼ爪先だけで移動していたので

そろそろ足先の感覚が

無くなって来た

少し気を緩めてしまった瞬間

ダンジョウは

奈落の底の餌食となった


── 暗黒に喰われる、地底帝国の詩。