ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

2021-01-01から1年間の記事一覧

解き解す

身体に埋まった 錆びた鎖を やさしくそっと 解きほぐす 幾年も経過して 幾重にも 雁字搦めに なっているので 一筋縄では いかないけれど 同じくらいの 時間がかかっても 少しずつ 鎖を外してゆきたい ── わたしを繋ぐものは、もう何処にもない。

何が起きても

生きてゆくなかで いつなにが どのように起こるかなんて 誰も分からない だからなるべく なにが起きても 揺るがない こころの強さは 持ちたいものだ けれども 全部に対応 出来るわけじゃない それを踏まえて こころはより強く なってゆくのだ ── 鉄壁のよう…

何事も無かったかのように【1-4-2】

ダンジョウの八岐大蛇は 目にも止まらぬ速さで 恐竜人間を喰らい尽くした ただ残ったのは 彼が使っていた勾玉光輪と 真っ二つになった ロブスター機械だけだった ダンジョウは目にも 異彩が宿っていたが 徐々に彼自身の 深緑色を取り戻していった 勾玉光輪の…

洋上の機獣

何の前触れもなく 洋上に機獣が あらわれた 長い首を 左右に振って 何やら海底へ 落とし物をしている 誰かが拾ってくれるのを 心待ちにしているようだ 黄色いランプの心臓が ちかちか瞬き 機獣のこころもちを 表している ── 落とし物は、竜宮の玉手箱の中身…

朝靄の海岸

朝靄を纏った海は 流氷が浮かんでいるよう そのまま この海岸から 走って向こうの山々へ 渡って行ける気さえする 砂浜に乗った 岩を滑らせて 遠く彼方へ するする滑り そのまま 夜の星となれ ── 嫌なことも全部、彼方へ滑らせてしまえ。

異形の光【1-4-1】

ダンジョウの手に光る 勾玉光輪は 徐々にその形を 大きくしてゆき 終いには 八岐大蛇のような 様相を呈していた 恐竜人間は その光の異様さに畏怖した テンムスも その切長の目を 大きく見開いて凝視した その間ダンジョウは まるで先ほどまでの 怖気づいて…

振り払う勇気

なんでもかんでも 受け入れていたら いつしか 要らないものまで 背負い込むことに なっている 入り口はいつも 開けていたんじゃ 泥棒が入っても 気付きやしない 要らないものまで 背負わされて 大切なものが すっぽり抜けてしまうんじゃあ 本当の自分を 差し…

まとわりつくもの

泥跳ねのように 風に飛ばされる 新聞紙のように 身体にまとわりついてくる 磁石にくっつく 砂鉄のように スプーンに吸い付く ハチミツのように 身体にまとわりついてくる 出来るだけ くっつかれないようにするには どうすれば良いだろう ── 感覚と感覚の、間…

光をその手に【1-3-4】

ダンジョウはこの状況で 目を瞑りながら ロブスター機械の 向こう側に落ちている テンムスの勾玉光輪の場所まで 一目散に走った 恐竜人間はすぐさま ダンジョウの姿を捉えると 勾玉光輪の刃の一部を チェーンのように伸ばして 少年目掛けて打ち込んだ ダンジ…

屋上の案山子

窓の外を見渡すと 煙突の側に 案山子が立っている 近くで見ると 同じ姿だけれど 遠くから見ると 毎回違う姿で 立っている 今日は何故だか 踊っているように 見えた気がした ── 屋上に案山子なんて、居るわけないのに。

豹餓鬼

公園で戯れる 豹の頭の こどもが数人 何やら奇妙な 遊びをしている 誰しもしって(い)る けれども 誰も知らない遊びだ 何処か儀式に 見えなくもない やがて遊びは終わり 日没に近づくと オーロラのカーテンが開き 天窓からは 雹の雨が降ってきた たちまち辺り…

目にも止まらぬ攻防【1-3-3】

テンムスは 恐竜人間の勾玉光輪を そのまま操り きりもみ回転しながら 恐竜人間へ 攻撃を仕掛けた テンムスの放った勾玉光輪は きりもみ回転を続けながら 恐竜人間の顔目掛けて 飛んでいった しかし 恐竜人間は四本指の手を 自分の前に差し出すと 最も簡単に…

人相

顔は特に その人間の こころを表す やましいこころを 持っていれば いくら笑っていたとしても 顔はやましいままである 嘘をつけば口は曲がるし 身体の何処かを 患っていれば 目には生気がなくなる おまけに顔色は 黒ずむし 皺も多く深くなる たまには 自分の…

こころの漏出

こころのなかで 思っていることは 身体の外や 身体を伝って表れる どんなに 誠実さを取り繕っても こころのなかは 透けて見えるのだ 上面だけ良くしても いずれ必ずボロが出る 身体とこころは そういう風に 密接に関係し合っているのだ ── 誤魔化すことに、…

並外れた身体能力【1-3-2】

虹色に鈍く光る 鱗のような皮膚を ぎらつかせて 丸太のような腕の筋肉が 形を変えて盛り上がっていた その刹那 手に持った勾玉光輪から 光の波が見えて 次第にそれは伸びて行き まるでプロペラのような 刃の三本伸びた 刀へと変化した あの丸いのなんにでも…

コラエル

胸のうちに 湧き上がる 欲望その他を 堪え鎮める 欲望の対象が 目の前に居ても 触れず振り向かず 素通りする 今はまだ その時ではないから 堪えているうち 通り過ぎて 行ったものならば ぼくには要らない ものだったんだよ ── その先に、目標があるのなら。

二零二四計画

水面下で 我々の知らない間に 進められている 奇妙な計画の名前だ 悪魔の再生が 完了するのか 新たなる悪魔が 生まれるのか わたしには よく分からないが どうやら 着々と計画は 進んでいるようだ 突然 人間の皮を被った悪魔が 人間の皮を脱ぎ捨てる かも知…

恐竜人間の脅威【1-3-1】

ロブスター機械の コックピットから姿を現したのは 人間の形は保ちながらも 恐竜の意匠を纏った 恐竜人間だった ダンジョウがこどもの頃に 図鑑で見た姿とは どこか少し違うように 感じていたが 顔や皮膚は恐竜のそれ そのものだった ただ 一歩間違えれば ト…

亜空間ニュースレター

寝ている間に その日のニュースが どこからともなく ポストに入る ぼくはそれを 夢のなかで開封して 新聞みたいに 一気に羅列させて 閲覧するのだ 朝目を醒ますと 忘れてしまうことも あるけれど 大抵はそのニュースを 把握したまま 快適に一日を過ごすこと…

生きとし生けるものの意匠

生きとし生けるもの すべての形には 意味がある その生きものだけに 用意された 最高の形なのだ 自然を侵害しないよう 自然に侵害されぬよう 彼らは選んで その形を纏っている 時に美しく 時に醜い しかしすべて 素晴らしい 形では表現出来ぬものも この世界…

偶然の抵抗【1-2-4】

ダンジョウが勾玉光輪を 握った途端 ぶわと虹色の光が渦巻き 熱を帯びていった あちあちあちあち あまりの熱さに ダンジョウはびっくりして そのまま勾玉光輪を 遠くへ投げ飛ばしてしまった それが功を奏したのか ダンジョウの放った勾玉光輪は 虹色のうねり…

ウォーキング・ブレッド Ⅺ

ぼくは目の前のパンを 大切に拾い上げて 元来た道をゆっくり歩いた 今まで生きて来て 上手くいかなかったときの ことをなぜか思い返していた ぼくは何かをやる度に 後悔しかしていなかった 満足感を得られたことなんて なかったように思えた でもそれは ずっ…

伝わらない真意

伝え方が下手なのか 受け取り方が下手なのか ぼくの真意は伝わらない どれだけ声を荒げ叫んでも すべては虚空に消えてゆく 予期せぬように 受け取られてしまう 上澄み液の ほんの一部分しか 誰もが救いとってくれない ぼくの真意は 上澄みになんて 存在しな…

炸裂する閃光【1-2-3】

そんな最中 後ろから追って来ていた ロブスター型の機械のハサミから 電磁気とも稲妻とも似つかない 何やら怪しげな輝きを ふたりは目の当たりにした 蓄電している テンムスが呟くと その瞬間 また先ほどの閃光が 跳ね回り機械のふたりを襲った テンムスが即…

ウォーキング・ブレッド Ⅹ

ぼくはずっと謝りたかった ごめんなさいが ずっと言いたかった 拭いても拭いても 涙はぼろりぼろり 溢れて落ちた ごめんなさい ごめんなさい 喉もとにつかえた 魚の骨のような詰まりが 取れたような気がした その様子を見ながら 兄は微笑んでいた ぼくが涙の…

勾玉光輪【1-2-2】

テンムスは なにやら仕切りに 操縦盤のようなものに向かい 手のひらを滑らせている よく見ると盤の上では 円形状の光を纏った何かが 宙に浮きながら回転していた ダンジョウは 小さな未確認飛行物体かとも思ったが 何やら手品のように テンムスの手の動きに…

ついばみ、ついばみ

悪い果実を ついばみ ついばみ 良い果実だけを とっておく 悪事はいつか 摘まれて ごみ箱のなかへ 捨てられる ついばみ ついばみ この実はどうか ── 色では判断できぬ、果実の味。

ウォーキング・ブレッド Ⅸ

きみは一体 何者なんだ ぼくが恐る恐る聞いてみると 仕方ないなあと スラックスの裾を ふわりとたくし上げ ぼくになにか見せて来た それはぼくと兄しか 持っていないはずの ミサンガだった 兄ちゃん 初めて見たような 感じがしなかったのは その所為だったの…

何気ないことが

今まで 当たり前に 思っていたこと 集中して よく体験してみる こんな贅沢な ことはないと 五感がひしめき 破裂寸前だ やろうとしなくても 出来ること やろうと思って やってみるのでは ありがたみの重さが 段違いさ ── ふと我に帰り、涙が出そうになった。

ダンジョウとテンムス【1-2-1】

少年と少女は 暫く見つめ合ったが 先ほどの閃光が炸裂し 爆風が勢い良く ふたりを襲った 髪は土ぼこりまみれ ぎしぎしになった 背後からは巨大なハサミが 右往左往しながら 近づいている それをのらりくらりと かわしながら ふたりの乗ったマシンは びよんび…