ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ウォーキング・ブレッド Ⅺ

ぼくは目の前のパンを

大切に拾い上げて

元来た道をゆっくり歩いた

今まで生きて来て

上手くいかなかったときの

ことをなぜか思い返していた

ぼくは何かをやる度に

後悔しかしていなかった

満足感を得られたことなんて

なかったように思えた

でもそれは

ずっと自分のこころを

押し殺して

自分から逃げて来たからなんだと

兄に謝ることが出来て

喉元の詰まりがとれてそう感じた

先ずは自分に謝った方が

良かったかも知れない

そう思うと

なんだか今まで悩んでいたことが

馬鹿馬鹿しく思えてきた

パン屋へ戻り

あにまねパンを店員に返して

ついでにお腹が空いていたので

売れ残っていたパンを

何個か買った

大好きなメロンパンがあったので

ちょっぴり良い気分だった

入り口を出ると

また新しい客が

店のなかへと入ってゆくのが見えた

ここへ来るときのぼくみたいに

背後をつけてやって来たのかも知れない

ぼくはその客の

こころの詰まりが

取れることを

切に願って

メロンパンを齧った

 

── 行き着く先は、幸せのパン屋。