ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

北西の都市【16-1-1】

さながらアールデコ調の

高層ビルが軒を連ねる

北西の都市

人々が静かに

宇宙と交信を始める頃

テンムスは

路地裏の迷宮を駆けていた

彼女は今まさに

西のプラントから逃亡を図った

プラント総括長シャオビンとの

戦闘中だった

シャオビンは巨大な図体をしているが

目まぐるしいほど

機敏に動き回っていた

 


 ちっ…!ちょこまかと…っ!!

 

 パウンド様の邪魔はさせん

 


 貴様!パウンドと繋がっているのか?

 やつは…何を企んでいる?!

 


テンムスは息を切らしながら

シャオビンに問いかけた

 


 それはお教え致しかねますな

 

ひょいと塀を飛び越えて

軽々しく答えた

 


 なら力ずくで答えてもらう…!

 ぞっ!!

 


テンムスは勾玉を投げつけた

大きく弧を描いて

シャオビンから逸れた

 


 あらあら

 どこを狙っているのでしょう?

 


テンムスの方を振り返るシャオビン

 


 よぉく前を見たらどうなの?

 


シャオビンが前に向き直ると

前方からテンムスの勾玉が襲いかかった

 


 こんなこども騙し…

 


シャオビンは自らの勾玉で防ぎ

それを跳ね返した

 


テンムスは弾き飛んだ勾玉を

取りに行ったが

対空時に現れたシャオビンに

好きを狙われてしまった

 


 遅い

 


テンムスの腹には

シャオビンの拳が食い込んでいた

 


 ぐっ…おぁ…!!

 


そのまま殴り抜けると

テンムスは中庭のような場所へ

突き飛ばされた

 


テンムスは呼吸が出来ず

悶えていると

シャオビンはすかさず降りて来て

テンムスの首に

勾玉で作り出した

心力サーベルを突き立てた

 


死に物狂いで動こうとするテンムスだが

先ほどの衝撃で

身体が思うようにいかない

 


 このようなあどけない小娘を

 殺生するのは気が引けますが

 何故パウンド様からは

 邪魔をするものはすべて

 排除するよう言われておりますので…

 悪しからず…

 


シャオビンがそう言った瞬間に

心力サーベルが消え去った

そしてシャオビンの身体が

テンムスの隣にばたりと崩れ落ちた

 


テンムスは何がなんだか分からないまま

辺りを警戒していると

 


 テメェの考えはどうなんだよ

 主人に従うだけなら

 飼い犬と同じじゃねぇか

 


闇夜に紛れて

路地裏の奥から人影が現れた

 


── 敵か味方か、地底帝国の詩。