ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

闇に包まれた愛情【16-1-2】

テンムスは

先ほど打ち込まれた拳が

まだ効いていたので

思うように声を出せなかった

 


 嬢ちゃん

 なかなか良い顔しているじゃねぇか

 


その男は

太い指でテンムスの顎を

くいともちあげ

まじまじ覗き込んだ

 


 おっと失礼

 紹介がまだだったな

 わたしはカンローニ

 この街で滞りのない社会を作る

 ことを目指している

 


カンローニは

頭をぶち抜かれて横たわる

シャオビンを見下ろした

 


 そう…この男のような害虫を

 間引いているのだ

 植物は虫食いにあったところから

 どんどん腐り落ちてゆく

 それは社会に於いても

 同じことが言えるのだよ

 


テンムスはカンローニの

目の奥を覗いていた

彼は今まで出会ったことのない

こころの持ち主だった

表面は闇に覆われているが

根本の部分は慈愛に満ちている

きっと悪人ではないことが

彼女には感じ取ることが出来た

 


 お前さん、ケガをしてるんだな?

 悪いようにはしねぇ

 ウチで休んでいくと良いさ

 なぁに、生憎ここはわたしの家の

 敷地なんだ

 敵は居ないよ

 


テンムスは立てなかったので

カンローニにお姫様抱っこを

して運んでもらった

 


── 善と悪も表裏一体、地底帝国の詩。