ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

満身創痍のふたり【16-1-3】

一方、溶岩ダムの

ダンジョウとタヅクリはというと

タヅクリは心力コーティングが

剥がれかけ

汗をダラダラかいていた

ダンジョウは

完全に心力を使い果たし

交信もままならない状態だった

 


 無事着いたは良いが

 このままじゃと

 ふたりとも消し炭じゃ!

 


タヅクリは心力を編むのが苦手ながらも

精一杯絞り出した

なんとかバリアを修復し

ダンジョウを担ぎ上げた

 


 ダンジョウ!

 しっかりするんじゃ!

 こんなところで死んでしまっては

 どうするのじゃ!

 まだお主にはやることが

 たくさんあるじゃろうて!

 


タヅクリは頻りに

ダンジョウに声をかけた

ダンジョウにも

それは聞こえていたが

返事をする気力も

声を出す力も残されていなかった

それにつけて

交信に必要な心力の扉も

閉じてしまっていた

 


ダンジョウの身体からは

徐々に煙が立ち上り

燃え上がる寸前だった

 


 まずい…!

 身体が燃え始めておる!

 


タヅクリは

ダンジョウの手を握ると

心力コーティングを

僅かながら分け与えた

 


人体発火は免れたが

危険な状態は以前変わらなかった

 


タヅクリは必死に出口を探した

 


 あそこか…!

 


出口は目と鼻の先だったが

生憎ハシゴを登らなければならなかった

 


 ハシゴは流石にこの老体には

 堪えるのう…!

 ぜぇ…はぁ…

 


タヅクリは息を切らしながらも

上まで登り切ると

ヨタつきながら

作業用の出口を開けて

外へ出た

 


── 尽きた体力の向こう側、地底帝国の詩。