ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

陰湿な囁き【5-3-3】

何時間眠ったことか

地底には時刻なんてものは

存在していないので

いま何時なのか

外の明るさも

常に一定なため

昼なのか夜なのかすらも

分からなかった

充分眠ったダンジョウは

ゆっくり目を開いて

薄暗い部屋を見渡した

砂金時計がさらさら

静かに流れていた

見た目は砂時計と

さほど遜色なかった

耳当てをつけたまま

だということを

忘れていたので

外そうとしたが

くっついて外れなかった

急にやることがなくなり

暇になってしまった

地上に居る

家族のことを思った

父さん母さん

心配しているだろうな

必ず家に帰らないと

すると何やら

遠くの方から

静かに囁きが

聞こえてくるのだった

耳をそばだてて聞いてみると

誰かの悪口を言っているようだった


── 悪夢の始まり、地底帝国の詩。