ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

介護タクシー【10-4-2】

ダンジョウは

シソウメをおぶって

タツムリバイクを

走らせた

まるで介護タクシーの様相だ

風が気持ちいいわね

シソウメは

呑気にツーリングを

楽しんでいた

こんなことしている場合じゃ

ないんだけれどなぁ

でも

鏡の断片を

譲ってもらうためには

なんとかやるしかないな

テンムスを探すための

ヒントにもなるかもしれないから

ダンジョウは

こころのなかで

そう思った

シソウメさんは

あそこにずっと住んでいるの

なんか言ったかしら

かなり耳が遠いようだ

もう一度大きな声で

同じことを言った

そうね

いつからだったかしら

けれどもずっと

あの家に住んでいるわね

嬉しいことも

悲しいことも

たくさんともにした

大切なお家よ

その言葉を聞いて

ダンジョウは

地上の家族のことを想った

父さん

今頃どうしているだろう

きっと悲しんでいるに

違いない

地上には

交信で繋がることは

できないのかな

ダンジョウは

ふと疑問に思った

そして鬱蒼と繁った

森に辿り着いた


── 先人の知恵があって今がある、地底帝国の詩。