ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ミリンダの楽屋【16-4-4】

摩天楼聳え立つ

メインストリームの一角

そこに佇むナイトクラブ

ニュー・ヨーグル

 


リンゴスことテンムスは

トップ女優ミリンダ

ショーを最後まで見届けると

ミリンダの楽屋へと赴いた

 


もちろんトップ女優なので

楽屋の前には

SPが待ち構えていた

 


 "これはどうやって

 切り抜けようかしら…"

 


テンムスはアップルタイザー入りの

シャンペングラスを

手にしたままやって来たことに気づいた

 


グラスのなかのアップルタイザーから

水の精霊を呼び出し

物陰に身を隠した

 


ダンジョウの精神ハックの要領で

精霊ハックを行うと

精霊を操りながら

自らの意思を精霊に宿した

 


そのままSPを掻い潜り

楽屋の扉の下の隙間に

精霊を滑り込ませた

 


ミリンダは着替えの途中で

下着姿だった

テンムスの意志の入った精霊は

ミリンダテレパスを飛ばした

 


 ─ 聞こえるかしら?

 


 うっ、なんなの?

 頭に直接声が流れてくるわ

 誰?誰なの?

 誰か居るの?

 


 ─ わたしはテンムス

 あなたの居座っている座を

 必ず奪い取ってみせるわ

 首を洗って待っていなさい

 

 何言ってるの?

 姿も見せないで!

 やだ、わたし何でこんなに

 躍起になっているのかしら

 きっと疲れているんだわ…

 


バシャっと

テーブルの上で

液体が飛び散る音がした

 


── 戦線布告、地底帝国の詩。