ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ミリンダとリンゴス【16-3-3】

というわけで

テンムスはナイトクラブ

ニュー・ヨーグルへと

足を運んだのであった

 


なかに入ると

ショーの真っ最中だった

テンムスは

そのままなかへ入ろうとしたが

黒服に止められた

 


 お客さま、ここは会員制ですので

 会員証をご提示願います

 


 "会員証…"

 


昨日

 


 や、やるわよ!

 その鏡がないと

 きっと世界はお終いよ

 女優にだってなんだって

 なってやるわよ!

 


テンムスは腹を括った

トップ女優になるというならば

生半可な覚悟では

鼻をくじかれるのが関の山である

同時に世界の命運も背負っていた

 


 結構結構

 それではこれを渡そう

 

カンローニは

テンムスの勾玉に

偽装の会員証をダウンロードした

 


 わたし、リンゴスなんて

 名前じゃないわ

 テンムスよ

 直しなさいよ

 


 いまきみはわたしに匿われていることを

 忘れたのかな?

 きみはそのままあの場に居れば

 ただの人殺しだ

 もしかしたら

 誰かに見られているかも知れない

 姿や服装も

 変えた方が身のためだぞ?

 


テンムスは結ってあった

ストレートロングの髪を

バッサリ切り落とした

メイクも少し変えて

完全に別人になった

リンゴスとして

しばらくの間

生きていくことを決めたのだった

 


 これでいいかしら?

 


テンムスもといリンゴスは

黒服に偽装した会員証を提示した

 

 見慣れない顔ですね…

 いまデータを確認いたします

 少々お待ちを

 


黒服は顧客データを確認した

 


 たしかに登録されております

 なかへどうぞ

 ただいまボーイがご案内いたします

 ごゆっくり

 


黒服がパンパンと

小気味よく手を叩くと

すかさずボーイが飛び出て来た

 


 ご案内いたします、こちらへ

 


リンゴスは

ボーイに先導されて

なかを進んでいった

 


その最中

ショーの真っ最中の

トップ女優

ミリンダと目が合った

彼女は少し見せつけてから

次の動作へ移った

 


リンゴスもミリンダ

しかと見届けてから

指定された席に腰を下ろした

ストッキングに包まれた脚を

静かに交差させて

優雅に背中をもたれた

 


手元には

アップルタイザーの入った

シャンペングラスが握られていた

 

 

 

── 回り始めた映画のフィルム、地底帝国の詩。