ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

放浪のタヅクリ【16-3-4】

タヅクリはひとり街を彷徨っていた

 


 ダンジョウもテンムスも

 どこへ行ったんじゃ

 毎回ワシを置いてけぼりにするんじゃ

 

ニヴィタシィの治療を受けた

タヅクリだったが

目が醒めると

ニヴィタシィの診療所ではない

見知らぬ場所へ寝ていた

 


かろうじて

大切な勾玉だけは持っていた

これがないと地底帝国では

ほぼ生きては行けないだろう

あまりにも不便になることが

多すぎるのである

 


どこかにジャンク品のマシンが

落ちていないか

辺りを見渡しながら

歩いてみだが

どうやらそのようなものは

見当たらなかった

 


 ワシの楽しみは潰えてしまった

 


少し投げやりに呟くと

ふとある店が目に留まった

 


どうやらバーか

何かのようだった

 


 こうなったら

 もうやけ酒じゃ

 今日は飲むぞ〜

 


こうしてタヅクリは

店内に入り込むと

早速カウンターの席に

腰を下ろした

 


すると何やら

楽器の演奏が始まった

 


木管楽器でも

金管楽器でもない

石管楽器だ

その筒からは

予想だにしないような

音が出ている

 


タヅクリは

頼んだ酒を飲むのも忘れ

その音色に釘付けになっていた

 


── 好奇心がヒトを駆り立てる、地底帝国の詩。