ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

心力グローブ【16-4-1】

ダンジョウは

ニヴィタシィと

スパーリングを行う

 


ダンジョウは

ニヴィタシィから

メリケンサックのようなものを

手渡された

 


 なに?これ

 


 アメリケン用の勾玉さ

 ボクシングで言う

 グローブってやつだな

 

 え

 グローブってもっと大きくて

 保護してくれる感じじゃない?

 


 バカヤロウ

 テメーの拳は

 テメーで守るんだよ

 こんな感じでな

 


ニヴィタシィは

勾玉を手にはめると

風船のように

心力の光を膨らませ

最も容易く

グローブを形成した

 


 そうゆうこと?

 このまま闘うのかと思った

 

 バカヤロウ

 それじゃあただの殴り合いじゃねぇか

 アメリケンは

 こころのぶつかり合いなんだ

 心力の尽きたものは

 拳も破壊されるんだよ

 


 なにそれ…

 すごく怖いね

 


ダンジョウは身震いをした

 


 そら、やってみろ

 これが出来ねぇと

 話にならんからな

 

ダンジョウは早速

アメリケン用の勾玉を

両手にはめて

心力を込めた

すると

とんでもない大きさの

グローブが出来上がり

ダンジョウとニヴィタシィは

吹き飛ばされてしまった

 


 バカヤロウ!

 そんなにでかくしてどうすんだ!

 一瞬で心力が

 底をついちまうぞ!

 ちょうど手を覆うくらいだ

 そして心力の出し方は

 まち針に糸を通すように

 繊細に、やさしくだ

 


ダンジョウはもう一度やってみたが

結果は同じだった

 


ニヴィタシィは頭を抱えたが

原因はダンジョウの

こころにあると考えて

問いかけてみた

 


 敢えて聞くが

 お前、西の都市で

 なにかトラウマになる出来事

 あっただろ

 心力の乱れ方が尋常じゃねぇ

 まるで荒波だ

 

ダンジョウは石のように固まり

目から大粒の涙を流し始めた

暫く無言で泣きじゃくった

 


 泣いてたって

 オレは見てねぇんだから

 わかんねぇだろ?

 コレ、こころの治療も

 兼ねているんだぜ

 


 ぼくは…ヒトを殺したんだ…

 助けられなかった…

 このちっぽけな手じゃ…

 誰も助けられないんだよ…

 


── 癒えぬ傷は深く残る、地底帝国の詩。