ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ダンジョウのパンチ【17-3-1】

 筋トレはやめだやめだ

 ダンジョウ、全開だ

 心力フルスロットルで

 スパーリングやっぞ

 


 よ〜し、がんばるぞ〜

 


ニヴィタシィのトレーニングルームには

もちろんリングも併設されている

ボクシングのリングとは異なり

八角形となっている

コーナーは宙に浮いており

そこから光のロープが延びている

 


ダンジョウはすぐに

レーニング器具を放り出し

手に勾玉をはめた

 


はじめはブワッと

大きくグローブが膨らんだが

徐々に手を包むほどの大きさまで

縮小していった

 


ニヴィタシィは

グローブをミットの形に変え

ウォーミングアップを始めた

 


 これ当たっても大丈夫?

 身体真っ二つになったりしない?

 


ダンジョウは

リングロープの心配をした

 


 あぁ、大丈夫だ

 グローブ用の勾玉と同じ

 心力光が出ているから

 触ってもあったかいだけだぜ

 


 よかった…

 その点安心したよ

 


ダンジョウも見よう見まねで

ウォーミングアップを始めた

 


 よし、じゃあ

 とことん打ち込んで来い!

 

ダンジョウの周りには

湯気のような

はたまた蜃気楼のようにも見えるものが

ゆらゆら立ち込めていた

 


前のめりに突進して来る

ダンジョウを見て

ニヴィタシィは思った

 


 "コイツ…、頭から突っ込んで来やがった!

 しかもノーガード!

 マッチなら一撃でやられるぞ!

 でも…、この態勢は利用出来るな…!"

 


ニヴィタシィのミットに

ダンジョウのパンチが

二、三ヒットした

 

 "戦闘のセンスはあるかも知れないな…!"

 ダンジョウ!

 頭が下がりすぎだ!

 下からやられるぞ!

 

ダンジョウは上へ向き直った

また二、三パンチを撃ったが

先ほどよりも

確実にパワーが落ちていた

 


暫くすると

ダンジョウはスタミナ切れを起こし

地面にへたり込んでしまった

 


 おいおい、そんなんでどうする

 試合はもうすぐなんだぜ?

 ちょっと休んだら

 今度はお前がミット持て

 


ニヴィタシィは

ダンジョウを休ませた

 


── 試合前期間の焦燥感、地底帝国の詩。