ブルードゥウェイのコンサートホールでは
新作演劇のオーディションが
粛々と執り行われていた
テンムスは
もちろん演技はおろか
歌唱の経験さえもなかった
周りの人々が行う様子を伺いながら
ミュージカルというものの雰囲気を
肌感覚で探っていたのであった
するとどうだろう
まさかのオーディションに
合格してしまったではないか
経験が無かったことが
功を奏したのか
恐らく自然体で挑めたのだろう
しかしテンムスは内心
裏で糸を引いている人物の存在も
疑わずにはいられなかった
ヴリテリーは
テンムスを祝福しながらも
複雑な心境だった
ミリンダは勿論怒り狂っていた
兎にも角にも
新作演劇の主演女優は
リンゴスことテンムスに決定したのであった
── その階段は栄光へと続くか、地底帝国の詩。