ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ヴリテリーとリンゴス【17-1-2】

ヴリテリーは

手元の砂金時計を見やると

途端に焦り始めた

 


 まずい!こんな時間だ!

 急がなくちゃ!

 

テンムスも

カンローニに手渡された

砂金時計を見た

 


ヴリテリーは

勾玉に心力を

ありったけ注ぎ込み

マシンを加速させた

途中、警察に追いかけられたが

なんとか撒いた

テンムスはその最中

サングラスをかけて

正体がバレないよう努めた

 


裏路地へ回り込むと

ゴミを蹴散らしながら

マシンは駆け抜けた

基本的にはオープンカーなので

飛んで来たゴミが

ふたりに直撃していた

 


テンムスは

操縦に必死なヴリテリーを見ると

それ以外の動作を行う余裕は

なさそうだったので

マシンに

心力のバリアを張った

ちょうど幌が覆った状態になった

 


 サンキュー、リンゴス

 これでジャンクのゴミ塗れに

 なることはなくなったよ!

 


 これらは食べものなのかしら?

 


 アンタここのヒトじゃないのかい?

 それならオーディション終わったら

 ジャンク食べに行こうよ!

 


 楽しみ!

 


テンムスは目を輝かせた

心力バリアは

ジャンク塗れになったが

テンムスとヴリテリーは

しっかり綺麗なままだった

 


ゴミ溜めの路地裏を抜けると

オーディション会場の

劇場が見えて来た

 


 よし!

 なんとか間に合いそうだ!

 


ヴリテリーは

マシンを路上駐車して乗り捨てた

 


 ここに停めといていいの?

 

 いいのいいの!

 ちょっとの間だからさ!

 


ふたりはオーディションへ向かった

 


── 試練の始まり、地底帝国の詩。