ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

モーレツなヒッチハイカー【17-1-1】

リンゴスことテンムスは

あるショーの

オーディションに向かっていた

西の都市で利用した

イモムシカーならぬ

牛カーが道路をひっきりなしに

走っていた

 


カンローニから聞かされた方法を

テンムスは試してみた

親指を天に向け

少し歩道から身を乗り出す

そうするとマシンが停まってくれる

はずだったが

どれも彼女の目の前を

素通りしてゆくばかりだった

 


 もう!

 どうして停まってくれないの?

 やり方が悪いのかなぁ

 


テンムスは色々な方法を試してみた

ちょっと親指を唇に当ててみたり

身体をくねらせてみたり

極め付けは

マシンの風圧を利用して

スカートを靡かせるのだ

 


よそ見したマシンが

何台か玉突き事故を起こした

 

 

 

 乗ってく?

 アンタもオーディション?

 


玉突きしたマシンを避けて

後ろから新たな牛カーが

躍り出て来た

操縦者は女性だ

 


 えぇ、いいの?

 

 もちろん

 旅は道連れとよく言うでしょう?

 


 ありがとう

 お言葉に甘えさせていただくわ

 


 わたしの名前はヴリテリー

 わたしも女優を目指してるの

 ヨロシク

 アナタの名前は?

 


 わたしはテン…リンゴス

 どうしてオーディションを受けると

 分かったの?

 


 そりゃあ

 他所行きでも無いし

 普段着でもないでしょう?

 この街でそれ以外の服ったら

 オーディションしかないじゃない

 あと、わたしカンが鋭いの!

 


ふたりはすぐに打ち解けた

テンムスは

シルヴィ以来の友だちが出来て

嬉しかったし、心強かった

 


── 持つべきものは友、地底帝国の詩。