ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

意思沸る目【16-2-4】

 ニヴィタシィは

 神妙な顔をしながら

 ダンジョウに向けて静かに言った

 お前、

 この街で地上人であることを

 公言でもしてみろ

 今に生命を狙われるぞ

 それどころか

 死なせてももらえないだろう

 格好の餌食だ

 特に日本人なら尚更だ

 お前は今から

 オレの隠し子になれ

 理由は適当につけておく

 

 え?!

 こいつ、ヘッドの隠し子だったんすか?!

 


 おい、テメェらは

 ちゃんと他人の話を聞け

 そういう設定にしとかないと

 面倒臭くなるんだよ

 今ですら既に面倒なのに

 ベルトをとるなら

 尚更命懸けになる

 なんせ多くの市民の目に

 触れることになるんだからなぁ

 それでも挑戦するか?

 


 ねぇ

 まずアメリケンって

 なんのスポーツなの?

 


 地上でいうボクシングといえば

 話は早いか?

 


 ボクシングが地底にもあるんだ!

 


 ただ、ボクシングには

 階級があるだろう?

 アメリケンにはそんなものは一切無い

 強いこころを持った者だけが勝つ

 ただそれだけだ

 ルールはボクシングと何ら大差ないぜ

 ラウンド制だし時間も決まっている

 まぁ、実はボクシングの原型なんだがな

 

 ボクシング、

 部活動でやってみようと思ったこと

 あったけど

 なんか怖くてやらなかったんだよなぁ

 どっちにしろ

 鏡が関与しているなら

 ぼくにはやるという選択肢しか

 残されてないよ

 ぼくはやるよ!

 


ダンジョウの目には覚悟が滲んでいた

 


 "コイツの目、何処か見憶えがある…

 この揺らぐことのない

 真っ直ぐな目だ…"

 オレの練習メニューは壮絶厳しいぞ

 血反吐吐くぜ

 


 え?

 ニヴィタシィさんは

 医者でしょう?

 


 バカヤロウ

 こう見えてオレは

 アメリケンの経験者だぜ

 


── 確固たる決意、地底帝国の詩。