ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ニヴィタシィとダンジョウ【16-2-3】

ダンジョウは状況が掴めず

まだキョトンとしていたが

少しずつ飲み込めてきたようだった

 


 ぼくはダンジョウヤマトです

 よろしく

 テンムスは…

 えと、珍しい模様の髪飾りをして

 ビードロみたいな耳飾りの

 ちょっとつり目の女の子

 見ませんでしたか?

 


 ここには来てねぇが

 オヤジなら知ってそうだけどな

 なんだ、はぐれちまったのか?

 


 はぐれたというか

 彼女は西の都市の

 プラント長を追って

 この都市に来たんです

 それからは行方が分からなくて…

 


 は?

 どういうこった

 ワープでもしてきたんか?

 


 えぇ、やつらどうやら

 空間を切り裂く道具を持ってるみたいで

 それで自由に移動できるみたいなんです

 


 あぁ、そりゃあ空間切開チョークだな

 たしかにあれだったら

 簡単に都市間を移動できるな

 それにしてもそんなシロモノ

 簡単に手に入るだろうか

 そもそもなんでプラント長なんか

 追ってるんだ?

 あ、分かった

 当ててやるよ

 これだろう…?

 


 あぁ!

 ちょっと!

 なに勝手に他人の荷物漁ってるんですかぁ

 返してください

 それ大事なものなんです!

 


ニヴィタシィは

ダンジョウのリュックのなかに

入っていた

二枚の鏡の断片を取り出して

見せびらかした

 


 これを追ってるってこたぁ

 よっぽどヤバいことに

 首突っ込んでんだよなぁ

 一般人ならこんなものしらねぇぜ

 


 闇医者だって一般人じゃないですかぁ

 


 オレたちゃ表向きは

 医院を営んでるが

 ギャングなんだよ…

 お前さんが相当ヤバいことしてるから

 オレたちのヤバさが

 霞んじまったじゃねぇか

 

 そんなにまずいことしてるの?

 ぼくたち

 


 だってこんなもん

 王家に代々伝わるようなもんだろう?

 オレだって話にしか

 聞いたことなかったぜ?

 ゲンナマを見るのはお初だよ

 そのテンムスって女…

 王族だなぁ

 そして元女帝と来た

 

 そうだけど…

 それがどうしたのさ

 今は普通の女の子だよ!

 


 ならこのブツは返すわけにゃ

 いかねぇんだよ

 なんせこれを欲しがってる連中は

 ごろごろいるんだからなぁ

 生命を狙われてもおかしくねぇシロモノだ

 

ダンジョウは不機嫌になった

 


 大人げないオトナのひと!

 ぼくは絶対そんなオトナには

 なりたくないね!

 じゃあどうしたら返してくれるのさ

 この世界の命運がかかってるっていうのに

 


 アメリケンっていうスポーツ

 知ってるか?

 


 なにそれ

 それとこれとは関係ないでしょう?

 


 あるんだよ、それが

 今度のチャンピオンベルトには

 これが埋め込まれてるらしいぜ

 


 鏡が?

 


 あぁ…どうだ?

 やる気になったか?

 


 そもそもなに?

 アメリケンって

 アメリカは地上の国でしょ?

 行ったことないけど

 


 おいお前、地上の人間か?

 


 そうだよ

 あんまり説明するの面倒だから

 言ってなかったけどね

 

 お前ら…

 面倒臭いことしてくれたな…

 


 ヘッドすいやせん!

 


── 愛すべきポンコツたち、地底帝国の詩。