ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

奇跡のベール【16-2-2】

ヘッドと呼ばれる男は

下っ端に指示を出し

ダンジョウとタヅクリを

手術台へ寝かせた

 


男はダンジョウの着ていた

衣服を脱がせると驚いた

 


 げっ、こりゃあひでぇな

 皮膚が爛れてぼろぼろじゃねぇか

 おまけに服にも張り付いてやがる

 


 ジジイの方はまだ大丈夫そうだな…

 


男はダンジョウの処置に

早急に取り掛かった

 


なにやら透明な

ベロベロした膜のようなものを

水のなかから取り出した

 


 ヘッド

 そりゃあなんすか?

 


 これはチューブワームの皮だ

 ヤケド患者には最適なシロモノだぜ

 


それをダンジョウの

焼け爛れた皮膚に

ペタペタ貼り付けると

みるみるうちに

傷跡を回復していった

 


 す、すげぇ…!!

 


脅威の再生能力に下っ端たちは

驚きを隠せなかった

 


これで処置は完了だ

 

 

 

ダンジョウはそんななか

どこか暗い場所を彷徨い続けていた

 


 チャソヴァ…

 チャソヴァ…

 


 なんだろう?

 誰かを呼んでいる声がする

 


 わたしは……待っている……

 ……が……来るのを……ずっと……

 


光に包まれたダンジョウは

そのまま目を醒ました

 


 え?!どこ、ここ

 あんたたち、誰?!

 


 こらぁ、命の恩人に

 あんたたちとはなんだ、ガキンチョ!

 礼節をわきまえろ!

 


下っ端のひとりが

ダンジョウを叱りつけた

 


 まあまあ、いいじゃねぇか

 生きてただけで最高さ

 

 しかしヘッド…

 


 細けぇこたぁ気にすんな!

 寿命が縮んじまうぞ

 目を醒ましたな、ガキンチョ

 オレは闇医者をやってる

 ニヴィタシィだ

 間違っても腕は確かだからな

 ヤブ医者じゃねぇぞ?

 


── 新たな顔ぶれ、地底帝国の詩。