ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

母親の正体【11-3-2】

シルヴィ

何やっているの

早く外へ

すごく脚が痛い

骨折しているみたいに

息も続かないし

どういうこと

テンムスは

状況を見に行こうとしたが

身体が重たい

少し動いただけで

息が切れてしまう

なにこれ

どうなっているの

ははははは

物置の暗がりから

子どものような

高笑いが聞こえた

テンムスは

勾玉に光を灯し

笑い声の聞こえる方を照らした

するとそこには

黒ずきんの少女が

立っていた

あなたは

なんだよ

つまんないな

せっかくかくれんぼで

もっと遊べると思ったのに

もう見つかっちゃったよ

自己紹介がまだだったね

あたしはフィナンシエ

司祭パウンド様の

副官のひとり

約束通り

それは返すよ

もう用済みだからね

それを持ったところで

あたしの力には

勝てないわ

なめるな

テンムスの怒りに

火がついた

そんな皺くちゃな

顔で言われても

ちっとも怖くないわ

なにを

テンムスは

勾玉を掲げた手を見た

自分の手と思えないほど

その手には皺があった

次いで顔も触ってみた

なにこれ

おばあちゃんじゃない


── 老化の呪い、地底帝国の詩。