ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

闇をはらう光【11-3-1】

シルヴィは

首根っこを掴まれた

母親はすぐさま

包丁を振りかざしたが

テンムスはそれを

素手で受け止めた

その時

包丁がテンムスに反応し

形を変えたのだった

それはテンムスの勾玉だった

何故ここに

しまった

光が

シルヴィ

鏡を

テンムスは勾玉の光を

鏡に当てると

一瞬物置全体を

光が覆った

ぎゃああああ

まだ弱い

母親は

じゅううと音を立てながら

叫び声を上げる

シルヴィ

今のうちに

早く

シルヴィは階段を駆け上がった

しかしながら

上がるうちに

息がどんどん切れてゆく

遂にはあと少しのところで

へたり込んでしまった

シルヴィは

老化していた


── 少女は老いてゆく、地底帝国の詩。