ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

郊外の景色【9-3-4】

地下に居たから

あんまり遠くへ来た感じ

しなかったけれど

街の方からは

こんなに離れていたんだね

ダンジョウが

感心して言った

中心地の建造物群とは

打って変わって

郊外は自然豊かな

平原といった感じだった

ぼくは地底に

こんなところがあるなんて

思いもしなかったよ

だって空だって

あるんだから

空はどこだって

あるじゃろう

タヅクリ博士は

物珍しそうに言った

そういうものかなぁ

ダンジョウには

自らの常識と呼ばれるものが

もう既に意味をなさないことに

少しずつ気がついていた

ここが地底であることにも

なんの違和感も

感じなくなるほどに


── 当たり前が見当たらない、地底帝国の詩。