ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

ただ風に吹かれて【9-4-1】

ゾニィは誰もが交信に入った後

黄金騎兵隊の詰所に来ていた

勾玉でセキュリティを突破し

監視カメラを擦り抜けて

目的の場所へたどり着いた

彼はタヅクリ博士に

頼んでおいた装置を起動すると

目的のものを何処かへ転移させた

何事もなかったかのように

彼もまた

その装置を使って

何処かへ転移した

意識を取り戻した何人かの騎兵は

詰所の異変を察知した

遺体安置所がもぬけの殻だ

しかしながら

どこにも荒らされた形跡はない

カメラの映像は

機能しておらず

証拠は残っていなかった

東の都市の街が

大騒ぎをしているなか

ゾニィは郊外の

静かな土地へ佇んでいた

ここはお前が生まれ育った街だからな

少しでも眺めの良いところに

眠ってくれよな

ゾニィは遺体を埋葬した

微生物の活動が

旺盛な土地だから

腐食もせずに

骨まで分解してくれるだろう

お前の顔を

もう見ることが出来ないと思うと

少し寂しいけどな

でも

こころのなかには

いつでもいるからな

楽しかったぜ

あばよ

その時風が吹いて

ギロチヨの声が聞こえた気がした

ありがとう

ゾニィは薄ら笑いを浮かべて

手を上げた

街の方へ

タツムリバイクが

駆けてゆくのが見えた


── いつもこころのなかに、地底帝国の詩。