ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

細胞の世界【3-4-1】

ダンジョウたちは

カメレオン型の能力を

発現させたまま

物陰に息を潜めた

祭壇内部は

侵入者の警告音が

ひっきりなしに

鳴り響いており

能力を解けば

即座に見つかって

しまうような状況だった

ダンジョウは

傷のある

テンムスの腹部に

手のひらを静かに置いた

片方は勾玉光輪で

塞がっており

話すと能力が

解けてしまう

更新の際に行った

手順を踏んで

尚且つ若干

応用を利かせながら

テンムスと自分自身の

全細胞を意識した

細胞ひとつひとつには

それぞれの世界があり

それぞれ生活する

人間の姿を見た

小さな世界のなかで

凡ゆる生き物が干渉し合い

それらを包み込んでいる

これが途切れなく

無限に続いている

ダンジョウは

壊滅寸前の世界を

幾億ばかりか

発見した

あまりにも多過ぎたが

少なからず

救える世界は

あるはずなのだ

ダンジョウの両鼻から

血液が滴っていた


── 世界は凡ゆるものが干渉し合っている、地底帝国の詩。