ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

擬態【2-3-3】

一方その頃テンムスは

街の人混みを

切り抜ける方法を

物陰のなかから

考えていた

このまま飛び込めば

確実に見つかってしまう

かと言って

じっとしていても

ダンジョウとは合流出来ない

そこでテンムスは

勾玉光輪の光の膜を

ベールを被るように

全身に纏った

そしてその身体能力で

建築物から建築物へ

軽やかに渡ると

まるで空中の景色と

同化しているようだった

ただ

難点としては

動きを止めてしまうと

かなりの違和感が

出てしまうことだった

地底帝国の薄明かりでは

充分すぎる機能だが

これはあくまでも

この状況をやり過ごすための

応急措置に過ぎない

そのためテンムスは

動き続けなくては

ならなかった

体力には自信のある

テンムスだったが

走り続けるとなると

やはり疲労感は

否めなかった

なんとか祭壇までの

かなり長い距離を

走り切ったが

祭壇の前は

帝国軍の傭兵の

頑丈な警備が

敷き詰められていた

勾玉光輪の光が

徐々に弱まっていたのか

傭兵のひとりは

テンムスを発見すると

一目散に捕縛へ向かった


── あと一歩のところで、地底帝国の詩。