ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

初期衝動のままに【17-1-4】

タヅクリはそのまま

Rubbスタンドで寝てしまっていた

砂金時計は

早朝の時刻付近で流れ落ちている

 


 ワシとしたことが

 酔い潰れて寝てしもうたわい

 マスター、すまんのう

 迷惑かけてしもうた

 


 いえ、良いんですよ

 わたしはいつもずっとここに

 居りますので

 


 ユヴァくんは

 流石に帰ってしもうたよのう?

 


 そうですね

 しかし

 ほんのさっきまでは居ましたよ

 タヅクリさんが

 Rubbの音楽に興味を示してくれたことが

 とても嬉しかったみたいで

 ずっと喜んでおりました

 


 ワシは好奇心だけは

 殺さないように心がけてはいるのじゃが

 いかんせん

 この年頃になると

 なかなか痺れるものにも

 出会いづらくはなるの

 久々に電流が走ったわい

 


 それはよかった

 ユヴァさんもきっと喜びます

 

 それと…

 あの楽器を教わりたいのじゃが

 

 あの楽器はロクソフォンと言います

 もっぱらロックスと呼ばれております

 彼みたいには吹けませんが

 私も教えるくらいは出来ますよ

 


 本当か!

 是非お願いしたいものじゃ!

 


 そう言えば

 使っていないロックスが

 あったような…

 


マスターは

奥の部屋に行くと

色褪せて埃の被ったロクソフォンを

取り出して来た

 


それを綺麗に磨き上げると

玉虫色に輝きを放った

まるで甲虫のようだ

 


 新しいマウスピースをつけて、と

 どうです?綺麗でしょう?

 


タヅクリはそれを受け取ると

なんとも言い難い表情になった

 


── 何かを始めるのに年齢なんて関係ない、地底帝国の詩。