ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

石木森林【14-2-1】

イモムシカーは

西の外れのマンション街に

辿り着いた

ダンジョウは思っていたような

高級タワーマンション街でなかったことに

驚きを隠せなかった

 


 え…ここ、人住んでるの…?

 廃墟じゃないの…?

 


 繁華街とはあまりに雰囲気が違うけど

 人はちゃんと住んでいるわ

 ただ、"人でなし"が住んでいることも

 確かではあるわね

 


ウナージュは真剣な眼差しで

古びたマンション街を見つめていた

 


 さて、降りましょうか

 


五人は車を降りると

マンション街の地を踏んだ

石畳みはまるで土のように柔らかく

踏んだ側から崩れるようだった

 


 なんか独特なにおいがするね…

 


ダンジョウは神妙な顔をした

通りに人影は見えず

石造りのマンションが

軒並み佇んでいるだけだった

空は鈍い明るさを保っていた

 


 すごいゴミの量…

 誰も掃除をしないのかしら…

 


テンムスは街中のゴミの量に

驚きを隠せなかった

ゴミの合間に

何かすばしっこく蠢くものを見かけた

 


 なにっ…?

 何か動いた…っ!!

 


テンムスは咄嗟にダンジョウの腕を掴んだ

彼女はすぐに我に返って

パッとその手をすぐに離した

 


 何かいたの?

 


ダンジョウは大雑把に聞くと

 


 な、なにも!

 なんでもないわ…!

 


テンムスは少し取り乱しながら

気丈に振る舞った

 


 "ネズミが嫌いなんて、

 死んでも言えない…

 ネズミが嫌いなんて、

 死んでも言えない…っ!"

 


 テンムス、ネズミ嫌いなんだ

 


 そう、

 テンムスはネズミが嫌いなようじゃの

 


こころの声はダンジョウと博士に

ダダ漏れだった

 


 "はっ、テレパスを切るの、忘れてた…!"

 


 それも忘れてるよ

 


ダンジョウは笑いながら言った

テンムスはトマトのように顔を赤くした

 


── 誰しも苦手なものがある、地底帝国の詩。