ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

狂気まみれの凶器【11-2-3】

みぃつけた

不気味な表情で

シルヴィの母親は

静かに呟いた

シルヴィとテンムスは

その無機質な声に

恐怖した

まずい

出口を完全に塞がれている

テンムスは

この薄暗いなかで

シルヴィを守りながら

戦闘を行うのは

かなり不利だと思った

でも

やるしかない

テンムスは

もしものためにも

シルヴィとテレパス通信を

繋いでおいた

シルヴィ

聞こえて

聞こえるよ

この通信は

暫く繋いでおくから

言葉を極力

口に出さないようにして

会話するときは

頭のなかで行って

いいわね

分かった

通信が終わるよりも先に

母親の凶器が

ふたりを襲った

あまりにも

辺りが暗いので

テンムスは

僅かに流れる

風を頼りにするしかなかった

視界は使いものに

ならないので

目を閉じた

地底人の視力は

暗闇ではほぼ

鳥目に近い

肌を伝う風を

感じながら

テンムスは

母親の攻撃を避け続けた

風は時折

かまいたちのように

皮膚を傷つけることもあった

ガタン

ふたりが

壁に追いやられたとき

テンムスの足に

何か当たった


── 暗闇に希望の光は差すか、地底帝国の詩。