ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

シルヴィ奪還作戦【11-1-1】

テンムスは

シルヴィの母親に

家から締め出されてしまった

信じ難い出来事に

呆然と立ち尽くしていたが

シルヴィのことを思うと

どうにかしないといけないと思った

彼女は無事なのだろうか

先ほどの怖がりようは

とても普通には見えなかった

他所の家庭の事情に

首を突っ込むのは

とても気が引けるが

友だちが大変な思いをしているのに

このまま引き下がるわけには

いかない

テンムスは

シルヴィを救出することを

こころに誓った

自分の宝物を探すことよりも

友だちを救い出す方が先決だ

まず

シルヴィの家の周辺を

隈なく捜索した

どこかに

入れそうな入り口がないか

確認したかった

こんなとき

ダンジョウならば

地図を作れるのに

人は居なくなってはじめて

存在の重さを知ることになる

シルヴィの幽閉された物置は

家のほぼ中心にある

ただ

それくらいしか

把握することは出来なかった

その物置が

どれくらいの規模なのか

彼女には知る由も無かった

取り敢えず

母親が出てくるのを待ったが

一向にその気配はない

むしろ父親が帰って来てしまった

これでは作戦は台無しだ

テンムスが他に出来ることといえば

精霊を呼び出すことくらいだ

精霊を呼び出して

それから

テンムスは

ダンジョウのように

マインド・ダイヴは出来なかったが

精霊になら

似たようなことが

出来るかもしれないと思った


── 発想の転換、地底帝国の詩。