ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

シルヴィの母【10-4-4】

何やっているの

鋭い目をして

ひょろりとした

青白い女性が

玄関の扉から

入ってきた

ママ

シルヴィは

彼女が入って来た途端

顔色を強ばらせた

あれだけ勝手に

人を入れるなと

言ったのに

あなたは

そんなことも

守れないの

悪い子ね

お仕置きが必要だわ

ママ

やめて

お願いします

やめてください

シルヴィは

何かを察知し

即座に恐怖した

テンムスは

初めて見る

奇妙な親子関係に驚愕し

その場に立ちすくんでしまい

何も考えることが

出来なかった

シルヴィは

泣き叫びながら

部屋の奥の

収納のなかに

幽閉されてしまった

収納の扉には

鍵もかけられていた

テンムスは

自分の親子関係とは

あまりにかけ離れていた

ごめんなさいね

うちの娘

なんだか出来が悪くて

テンムスは

彼女が何を言っているのか

最早理解出来なかった

今日はお暇

していただけないでしょうか

はい

テンムスは

あれよあれよという間に

外へ出されてしまった

シルヴィの悲鳴は

その間も聞こえ続けていた

テンムスは外に閉め出されたが

先ほど空っぽの頭で

部屋の通路を見た時

鏡の断片のようなものが

飾ってあったように見えた

気のせいだろうか

テンムスは

そんなことより

こんな親子の関係性が

この世に存在すると

いうことが

ショックでたまらなかった


── 境遇の違いに愕然とする、地底帝国の詩。