ヒトリゴ島

生きとし生ける、ひとりごと。

懐かしい名前【10-4-1】

テンムスは

遠くの海を眺めると

あることに気がついた

舟のようなものが

至るところに浮かんでいることに

あれはなんなの

シルヴィに聞いてみた

あれは

死んだ人たちの魂を

あの世へ送るための

舟なんだって

そして

送った後に

肉体をつけて

また戻ってくるよう

お祈りするためのお祭りなの

この絵本のお話のようにね

それは

どんなお話なの

テンムスは

気になって聞いてみた

悪い魔法使いを

巨人が退治する

お話なんだけれど

この街の巨人の伝説を

もとにしているんだって

舟を海に浮かべると

魔法使いに消されてしまった

人たちが戻ってきて

巨人になって

魔法使いを倒してくれるの

願いごとは

信じていたら

きっと叶うっていう

教訓か何かかしらね

わたしの願いも

信じていたら叶うかしら

テンムスは

シルヴィに向けて

にっこり笑った

きっと叶うよ

テンムスの願いはなんなの

そうね

母上ともう一度

会うことかしら

そっか

会えると良いね

シルヴィ

あなたの名前は

母上の名前とそっくりだから

なんだか親近感が湧くわ

テンムス

うちに遊びに来なよ

今日はママとパパは

お祭りの仕事で

居ないから自由なんだ

ええ

でも

良いの

こう見えて

ちゃんと料理も出来るのよ


── 包み込むやさしさ、地底帝国の詩。